「INTERVIEW / COLUMN」記事
問題は「食べ過ぎ」ではなく「食べない」こと “動ける体”を作るために大切な主食の力
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2026.01.30

特集:「ピリオダイゼーションに合わせた移行期の食事」強化トレーニング期編
競技スポーツにおいて、1年間を期分けし、それぞれの期間に適したトレーニングや食事プランを実施することを、ピリオダイゼーションといいます。ピリオダイゼーションに従った食事は、トップアスリートはもちろん、部活動生にとっても、体調を整え、運動パフォーマンスを発揮するうえでプラスになります。
今回はオフから新学年、新シーズンに向かう「移行期」の食事を特集。今回は移行期の後半、「強化トレーニング期」についてです。学生から日本代表まで、数多くの選手の食事をサポートする、日大の松本恵先生に話を伺いました!
◇ ◇ ◇
移行期の前半――オフ期が終わると移行期の後半に突入。いよいよ新しい年、新しいシーズンに向けた強化トレーニングがスタートします。
強化トレーニングの目的は、1年間「動ける体」を作る体力作りです。これは、陸上であろうと球技であろうと、あるいは格闘技であろうと、どの部活、競技にも共通。長い時間、長い距離を走る、いわゆる『走り込み』、水泳ならば『泳ぎ込み』を中心に、有酸素運動で持久力をつけていきます。
この時期、食事の面で最も大切なのは、ご飯(主食)をしっかり食べる習慣をつけることです。
ご飯や麺類といった炭水化物は、体内で消化されると運動時のエネルギー源に変換されます。練習量が急激に増えるこの時期に、ご飯の量が足りないと、運動時にエネルギー切れを起こし、練習についていけません。加えて、「十分な量を食べる習慣」を身につけなければ、シーズンを通して体力がもたないだけでなく、ケガをする原因にもなります。
主食をしっかり食べるようになると運動時だけでなく、学生なら授業中の、実業団の選手であれば仕事中の集中力低下やエネルギー切れを防ぎます。ですから1日3食と補食で、ご飯や麺など主食を十分に食べることを当たり前にしていきましょう。
しかし一時期、「糖質制限」というダイエット法が国内で一大ブームとなり、審美系の競技の選手や陸上長距離、体重・体脂肪を気にするアスリートの間でも、お米を控える食事が広まりました。残念ながらいまだに「お米を増やしたら体重が急に増えることが怖い」という選手は少なくありません。
でも、実はほとんどのアスリートが抱えている問題は、「食べ過ぎ」ではなく「食べない」ことによるエネルギー不足。実際、私の見ている大学やトップアスリートたちは、ご飯の量を増やした結果、適正体重に戻る選手もいます。
もちろん、「急にお米の量を増やしたら、体重がドンと増えるかもしれない」という恐怖心もわかります。そこで、選手たちにおすすめしているご飯の増やし方を紹介しましょう。それは、食べるご飯の量を、3日間~1週間ごとに、カレースプーン1杯分ずつ増やしていく方法です。
このように、食べる量をちょっとずつ増やしていくと、増えた分の食事をちゃんとエネルギーに変えられるよう、体が変わっていってくれます。気づいたら、しゃもじ1杯分ぐらいは増やせるようになるので、試してみください。
筋肉増量期に必要なたんぱく質やアミノ酸の補給方法
さて、移行期後半は体力作りに続き、筋肉増量期に入る競技もあります。その場合、持久力の強化期とも栄養の摂り方は異なり、たんぱく質やアミノ酸の摂取のタイミングと量の調整が重要になります。
筋肉増量期のポイントは2つ。1つ目は練習後になるべく早いタイミングで、たんぱく質を補給すること。2つ目は朝・昼・晩の食事で、バランス良くたんぱく質を摂ることです。
まず実践してほしいのが、トレーニング直後のたんぱく質の補食、特に必須アミノ酸が豊富な補食を用意することです。
簡単に補給するには、プロテインやアミノ酸のサプリメントが便利ですが、おすすめは魚肉ソーセージやサラダチキン、乳製品やゆで卵といった食品。というのも、食品のほうが安価なうえ、より多くの栄養をまとめて摂ることができるためです。
補食のたんぱく質量は10~20グラム程度――おにぎり1個とゆで卵やたんぱく質を補強した飲むヨーグルトを各1個程度――で十分。取り切れない場合は、プロテインやサプリメントを補助的に使ってもよいかと思います。
2つ目に、3回の食事の中でバランス良く取ります。バランス良くとは、主食(ご飯)とともに、おかずや汁物から、肉・魚・卵・大豆製品、乳製品といろいろな食品からたんぱく質を摂ることを指します。皆さん、ご飯=糖質と考えますが、実はたんぱく質もしっかり摂れる食品であることも、覚えておいてください。
また、たんぱく質は一度に消化・吸収できる量に限りがあるので、1回の食事で大量に摂り、他の食事はちょっとだけ食べるのも避けます。1回1回、補食と同様に一食20グラム程度を食べることを目安にしましょう。
ピリオダイゼーションでは、移行期の次は『準備期(プレシーズン)』です。準備期では、試合期に向けてしっかり体重・体組成をコントロールすること、競技に特化した技術トレーニングが中心になります。
その前の移行期で、体をしっかり休めて英気を養い、より強くなるための習慣作り、下地作りを進めていきましょう。

■松本 恵 / Megumi Matsumoto
管理栄養士/公認スポーツ栄養士。日本大学文理学部体育学科教授、博士(農学)。北海道大学大学院農学研究科を修了後、スポーツ栄養の現場サポートに携わるようになる。サウスオーストラリア大学招待研究員を経て2011年より現職。同大学の柔道部、陸上競技部、トライアスロン部、体操部などの選手の栄養サポートを行うほか、オリンピックでは2021年東京大会、2024年パリ大会でサーフィン日本代表をサポート。また、日本ライフセービング協会ハイパフォーマンスチーム専門スタッフ(栄養士)として活動中。
(W-ANS ACADEMY編集部)
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