「COLUMN」記事
アスリートに不可欠な“補食”を選ぶヒント 適切な栄養補給はケガ予防や回復にも効果あり
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2026.10.05

特集「補食の摂り方」後編
カラダ作りやパフォーマンスアップに欠かせない食事。毎日、たくさんのエネルギーを消費する運動部員やアスリートは、1日3度の食事だけでは必要なエネルギーや栄養を確保できません。そこで重要なのが『補食』であり、その摂り方について前後編にわたり特集。後編では目的や悩み別に合わせた補食について、公認スポーツ栄養士の日大・松本恵教授に伺いました。
◇ ◇ ◇
前編では「いつ、何を摂るのか」など、補食の基本的な考え方についてお話ししました。後編はもう一歩踏み込んで、今日の自分、あるいは今の自分にはどんな栄養素が足りないのか、必要なのかを考えながら、補食を選ぶヒントをお伝えします。
前編でもお伝えしたとおり、アスリートにとって補食とは、3度の食事だけでは足りないエネルギーと栄養素を補うために必要な間食です。パフォーマンスアップや目標にしているカラダ作り、そしてよいコンディションを維持するためにも、上手に取り入れていきましょう。
【貧血が気になる人は鉄分強化の乳製品をプラス】
女性アスリートに多く見られるのが貧血。特に持久系競技や体操競技のような審美系種目では、貧血になっている選手が少なくありません。一般の人よりも運動量が多いアスリートは、1日20~30mgの鉄分摂取が望ましいと言われています。
鉄は三度の食事だけでは、なかなか必要量が摂れない栄養素の一つ。鉄不足を感じる人は、ヨーグルトドリンクやビスケット、グミなどの鉄強化食品を補食に取り入れても良いかもしれません。サプリメントで摂るのは、食事や鉄強化の食品でも足りない場合に活用してみましょう。疲労が蓄積している時に鉄のサプリを大量摂取すると、体内の炎症を引き起こす場合もあるので、サプリメントは計画的に摂ることが大切です。
【骨の成長や疲労骨折の予防には牛乳や小魚スナックを】
骨の成長を促したり、骨密度の低下・疲労骨折の予防に不可欠な栄養素といえばカルシウム。日本人はカルシウム不足が慢性化しているため、意識して摂取する必要があります。補食で摂るなら牛乳・乳製品。特に牛乳はカルシウムのほか、たんぱく質、ビタミンD、亜鉛、マグネシウムなども豊富で優秀。また小魚もたんぱく質や鉄が豊富なので女性アスリートにおすすめ。例えばイワシなどの小魚スナックは携帯もしやすく、おやつ感覚で食べられます。
そのほか、植物性のたんぱく源・納豆に含まれるビタミンKも骨の成長や骨密度の維持に欠かせない栄養素の一つなので、練習後に納豆巻きもおすすめです。
空腹のまま過ごすと疲労回復や筋肉の修復に悪影響

【筋トレ後はたんぱく質だけでなく水分も大切】
筋トレ後の筋肉はいわばオーバーヒート状態。発汗を伴っている場合は脱水が引き起こされ、さらに悪化します。空腹のまま1、2時間過ごしていると、血流が滞り、疲労回復や筋肉の修復が大幅に遅れます。リカバリーを促し、筋肉の成長に欠かせないのが、たんぱく質。例えば魚肉ソーセージやゆで卵、ヨーグルト、牛乳などを組み合わせて、約10~20gのたんぱく質を水分とともに摂りましょう。特に牛乳は発汗で失われがちなミネラルも豊富なので、脱水からの回復に適しています。
プロテインパウダーやアミノ酸のサプリメントは、どうしてもたんぱく質が足りない場合は使ってもよいですが、食品のほうがいろいろな栄養素が含まれているので、優先的に摂りましょう。逆にプロテインバーは脂質が高い場合が多いので体重コントロールの必要がある人は注意しましょう。
【果物は疲労や筋肉・靭帯のケガからの回復をサポート】
ビタミン・ミネラル、そして水分をたっぷり含む果物。バナナやフルーツゼリーは運動前ならエネルギー・チャージに、運動後なら疲労回復に効果的です。加えて果物に多く含まれるビタミンCはケガの回復もサポートしてくれる栄養素。特に筋肉や靭帯を痛めている人、リハビリ中の人は積極的に摂りましょう。
【緊張で食欲が出ない時はミニサイズのおにぎりを!】
試合の日は緊張感から「前の晩から食欲が出ない」「朝から食事がのどを通らない」という選手もいるかと思います。そんな時、エネルギー切れを起こさないよう、私がよく選手たちに作るのが小さめに握ったおにぎり。実は日本代表クラスの強靭なカラダの男子選手でも、試合当日になると「緊張して食事が食べられない」という人はいます。そんな彼らも、見た目が小さいおにぎりであれば、気持ちの負担もなくパクパク食べてくれるのです。
コンビニのおにぎりはごはんの量がだいたい150gありますが、私はきっかり100gのご飯で握っています。すると、ちょうど2口、3口で食べ切れるサイズになりますよ。
また具材は定番の鮭や梅はもちろん、たんぱく質や脂質も同時に摂れる、チーズやハム、卵焼き入りで「おにぎらず(にぎらないおにぎり)」にするのも◎。ただし、試合の時にいきなり食べ慣れない具材にすると、胃腸がびっくりする恐れがあるのでNG。ふだんからいろいろな具材を試して、「これなら食べられるかな」と思う具を見つけておきましょう。
教えてくれたのは…

■松本 恵 / Megumi Matsumoto
管理栄養士/公認スポーツ栄養士。日本大学文理学部体育学科教授、博士(農学)。北海道大学大学院農学研究科を修了後、スポーツ栄養の現場サポートに携わるようになる。サウスオーストラリア大学招待研究員を経て2011年より現職。同大学の柔道部、陸上競技部、トライアスロン部、体操部などの選手の栄養サポートを行うほか、オリンピックでは2021年東京大会、2024年パリ大会でサーフィン日本代表をサポート。また、日本ライフセービング協会ハイパフォーマンスチーム専門スタッフ(栄養士)として活動中。
(W-ANS ACADEMY編集部)
RELATED
関連記事
2026.09.25
バドミントン・五十嵐有紗選手、陸上・田中佑美選手が登場! 「月経とコンディショニング」を学ぶ無料イベント、10月12日に日本体育大で開催
コンディショニング
バドミントン
月経
陸上
2026.08.20
女性アスリートの経血をバイオデータ化 Jリーグクラブと連携…科学的アプローチでサポートへ
コンディショニング
月経
2026.08.18
男性指導者の8割が抱えるジレンマ…女性特有の不調「確認を躊躇」 過度な警戒心がケアの障壁に
コンディショニング
月経
2026.07.29
ソフィの初経教育支援サイト、累計利用校数が1200校突破 教員の98.7%が高評価
コンディショニング
月経
2026.07.16
格闘技女子の約8割が“尿もれ”を経験・不安視 「試合成績にも影響」が多数派に
コンディショニング
RECOMMENDED
おすすめ記事
2026.10.02
1日3食だけでは足りないアスリートのエネルギー おやつとは違う“補食”の摂り方とは
コンディショニング
食事
2026.09.17
汗臭さや泥汚れを落とすには? 専門家に聞く洗濯方法…コースや洗剤の“最適解”
コンディショニング
2026.08.31
汗をかく夏に大事な“肌ケア” 日差しが気になる季節に…ダメージを抑える3ステップ
コンディショニング
美容
2026.08.29
スポーツと切り離せない“汗問題” ニオイの原因も…正しい知識で実践する運動前後の対処法
コンディショニング
2026.07.31
ハート型の“編まない編み込み”でおしゃれに! 専門家が教えるテクニックいらずのヘアアレンジ


