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女性アスリートと月経の悩み 男性コーチとの関係、ピル服用…大切なのは「相談」と「将来を見据えた視点」

「ACADEMY / PREMIUM」記事

  

女性アスリートと月経の悩み 男性コーチとの関係、ピル服用…大切なのは「相談」と「将来を見据えた視点」

著者:W-ANS ACADEMY編集部

2025.03.28

コンディショニング

月経

左からMCの伊藤華英さん、ゲストの佐藤友佳さん、講師の須永美歌子先生【写真:松橋晶子】
左からMCの伊藤華英さん、ゲストの佐藤友佳さん、講師の須永美歌子先生【写真:松橋晶子】

「国際女性デー」オンラインイベント第1部、陸上・佐藤友佳さんと考える「月経とコンディショニング」

 3月8日が「国際女性デー」と国連で定められてから、今年で50周年を迎えました。スポーツを楽しむすべての女性を応援するメディア「W-ANS ACADEMY」は、翌9日に特別企画として世界を舞台に活躍してきたトップアスリートと専門家を招き、部活動などで日々汗を流す選手や指導者、保護者を対象にしたオンラインイベントを開催。第1部は「月経とコンディショニング」、第2部は「食事と体重管理」をテーマに、女性の体と心について学びを深めました。

 今回は第1部「月経とコンディショニング」の模様をレポートします。今年1月に現役引退を発表した陸上女子やり投げの佐藤友佳さん(ニコニコのり)がゲスト出演。講師に須永美歌子さん(日本体育大学教授)、MCに元競泳日本代表の伊藤華英さんを招き、女性特有の悩みとコンディショニングの難しさについてトークを繰り広げました。

 ◇ ◇ ◇

 佐藤さんは高校時代から全国のトップレベルで活躍。東大阪大学を卒業後は小学校の職員として働きながら競技に取り組みましたが、その裏では22、23歳を境にPMS(月経前症候群)に悩み、「気分の波が激しく腰のだるさもあり、生理前になるとトレーニングに行きたくない気持ちになった」といいます。「一番悩んだのは、生理が試合と重なる時。試合が近くなると気分の落ち込みがひどく、当日はウェアのスパッツに生理用品の形がひびいて目立ったら嫌だなと思っていた」と当時を振り返りました。

 PMSが重い時は練習メニューを調整して取り組んだものの、「男性コーチとは生理に対する理解に差があり、コミュニケーションが難しかった」と佐藤さん。「例えば私とコーチの間に女性がいたら、もう少し話しやすかったと思います。生理にともなう症状は一人ひとり異なる。指導者の方はそのことを理解し、少しでも選手が相談しやすい環境を整えてほしいです」と訴えました。

 この話を受けて、「お腹が痛いなど、調子が悪い時に我慢してトレーニングをしても、十分なパフォーマンスは発揮できません」と須永教授は指摘します。「トレーニングは目的に応じて適切な運動負荷をかける必要があります。そのため、体調が悪く十分に力が発揮できない場合にはトレーニング効果が落ちてしまうこともあります。選手は生理に限らず調子が悪い時は状態をきちんと伝え、指導者は練習内容を調整することが大切」と解説しました。

低用量ピルを服用して気づいた「毎月生理が来るありがたみ」

月経に関する経験談を語った佐藤友佳さん【撮影:松橋晶子】
月経に関する経験談を語った佐藤友佳さん【撮影:松橋晶子】

 また佐藤さんは現役時代、PMS対策として1年間、低用量ピルを使用した経験がありました。もっとも「それまで生理が来るのがわずらわしく感じることもあったけど、低用量ピルを服用したことで、毎月生理がきちんと来るありがたみや安心感に気がつきました」とのこと。この話を受けて須永教授は、「妊娠していると思われそうで嫌、という理由で(月経に関する不安があっても)産婦人科に行かない選手は多い。でも今は『レディースクリニック』といって、女性特有の悩みに対応してくれる病院はたくさんあります。スポーツをする女性であれば、日常生活や運動パフォーマンスに影響することがあれば、(小さなことでも)病院に相談してほしい」と聴講者に向けてメッセージを送りました。

 イベントの最後に、自身の結婚、妊娠を公表した佐藤さん。「現役時代から、将来は子供がほしいなという気持ちがあった。現役の女性アスリートは、周囲に結婚、出産の話をしにくいと思うが、私の場合、所属先(ニコニコのり)に自分の想いを話したら理解し、サポートもしてくれました。今後、月経とうまく付き合っていける女性アスリートが増えたらいいなと思います」と語りました。

 佐藤さんの言葉に「素敵ですね」と祝福の言葉を送った須永教授。「佐藤さんのようにきちんと基礎体温を記録し、自分の月経周期やコンディションに向き合い、健康を維持しながら競技を続けていく選手が増えてほしい。今だけではなく、先を見据えて競技に取り組んでほしい」と、すべての女性アスリートに向けてエールを送りました。

(W-ANS ACADEMY編集部)

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