「INTERVIEW / COLUMN」記事
硬くなりやすい股関節、日頃からできるケアは? トップトレーナーが2つの対策法を紹介
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2025.09.11

アスリートにとって『梨状筋』ケアの重要性とは?
人間の体のなかで、最もたくさんの筋肉が関与しているのが『股関節』。それだけに、アスリートから高齢者まで老若男女問わず、痛みや不具合を抱えている人が多い関節です。なかでもやっかいなのが、股関節のインナーマッスル・梨状筋。そこで、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導をはじめ、部活動生からトップアスリートまで様々な競技のフィジカルトレーナーを務める中野ジェームズ修一さんが、股関節の重要性と梨状筋のケアについて教えてくれました!
◇ ◇ ◇
股関節は上半身と下半身をつなぐ“要”。立つ、座る、歩く、走るといった動作を支えており、アスリートはもちろん、一般の方も日々、大きな負荷がかかっている関節です。また、股関節は23もの筋肉に支えられているため、中には“使い過ぎ”や“使わなさすぎ”によって、硬くなり、きちんと伸び縮みしない筋肉も出てきます。すると、股関節を形成する骨盤と大腿骨の位置関係がおかしくなり、痛みを感じたり、運動パフォーマンスが低下したりといった違和感や不具合が起こります。
股関節に関わる筋肉のなかでも、特に複雑でやっかいなのは6つの小さな筋肉の集合体である外旋六筋です。外旋六筋は股関節のインナーマッスルで、太ももを内側・外側にひねる『回旋』という動きに作用します。6つの筋肉たちが仲良く、主張しすぎず、スムーズに働いてくれるといいのですが、どれかが主張しすぎたりサボったりすると、一部にかかる負荷が大きくなります。サボってばかりの筋肉はどんどん弱くなり、働きすぎる筋肉はどんどん硬くなり、その結果、違和感や痛みが生じるのです。
ウォーキングや登山が趣味の人は要注意
中でも硬くなりやすいのは、外旋六筋で最も大きな筋肉・梨状筋です。梨状筋は背骨から骨盤をまたがって大腿骨に付着しています。これが硬くなると股関節の動きに制限がかかります。実は私自身も左の梨状筋が少し硬いのですが、真っすぐ立つと、どうしても左の股関節が詰まりやすく、左脚が少し外側を向きます。

梨状筋は長距離ランナーなどのアスリートも使いすぎて硬くなってしまうことが多いのですが、オフィスで座りっぱなしの人も使わなすぎで硬くなりやすい筋肉です。硬くなると、腰が張ったり、腰痛が起きたりすることがあります。さらに面倒なことに、梨状筋の下には坐骨神経が通り、筋肉が硬くなると坐骨神経を圧迫。座骨神経痛に関与したり、「梨状筋症候群」を発症します。腰痛の正体が、実は梨状筋症候群だったという方はとても多いのです。
梨状筋症候群はランナーによく見られる症状のひとつですが、普段からよく歩く人、ウォーキングを毎日する人、ハイキングや登山が趣味という人も要注意です。
というのも、股関節の回旋運動は歩いたり走ったりする際、足が着地するたびに起こります。特に整地されていないデコボコの道を歩くときは股関節にグッと力を入れるため、筋肉は働きっぱなしになります。当然、何のケアをしないままでいると次第に梨状筋が硬くなり、梨状筋症候群を引き起こすというわけです。
日常生活でも重要な股関節…大事なのは地道なケア
そこで、硬くなった梨状筋のストレッチ『インターナルローテーション』を紹介します。ただし、インターナルローテーションは負荷も強いため、痛みを感じた場合は中止し、後に紹介する『モビライゼーション』から取り組んでください。

【HOW TO】
床に両脚を開いて座り、片方のかかとを股間に近づけ、もう片方の足はお尻の後ろに持っていき、手で足首のあたりを持ちます。息を吐きながら、手でつかんだ足を上へ引っ張り、30秒程度キープ。床に戻す。5~10回繰り返し、逆側も同様に行う。
ポイントは脚を引っ張る際、大腿骨を根本から回すイメージで行うこと。そして足の裏を天井に向けるよう動かすとうまくいきます。部活動やランニンググループなどで行うときは、チームメイトやトレーナーに脚を持って動かしてもらうなど、サポートしてもらうと楽にできます。
インターナルローテーションで痛みを感じた人は、先にモビライゼーションを行います。こちらは使いすぎで緊張した外線六筋のような小さな筋肉をゆるめる作用があり、私が担当するアスリートたちも、運動後のケアとして行っています。また、就寝前に行うとスムーズな入眠を促し、疲労回復にもつながります。
コツは、貧乏ゆすりのように、細かくゆらゆらと関節を動かすこと。なるべく脱力して行うといいので、インターナルローテーション同様、誰かに脚を持って動かしてもらうとより効果的です。

【HOW TO】
床に座り、両手は体の後ろにつき、上半身の力を抜きます。両脚は前に伸ばし、付け根から内側、外側と交互にゆらゆらと30秒程度続けて動かします。
続けて、片方の脚の膝を曲げて横に広げます。伸ばしたままのもう一方の脚だけを同様に30秒間ゆらゆら動かします。左右反対側も同様に行います。片脚だけのモビライゼーションでは曲げた脚の側の骨盤が固定され、もう一方の股関節を効果的に動かせます。
最初にもお伝えしましたが、股関節はスポーツにおいても日常生活においても、非常に重要な役目を担う関節です。「少し動きが悪いな」「引っ掛かりを感じるな」など感じたら見逃さず、地道にケアを続けましょう。

中野トレーナーが股関節をとことん解説!
『すごい股関節 柔らかさ・なめらかさ・動かしやすさをつくる』
「股関節のしくみを理解すれば、自分で自分の体を良くしていくことが可能」。日本を代表するスポーツトレーナーである著者が、股関節の仕組みをとことん解説。現場で行っている股関節の状態を改善するメソッドも紹介する。(¥1,760/日経BP)
教えてくれたのは…
■中野ジェームズ修一 / Shuichi James Nakano
スポーツトレーナー。1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。著書に『すごい股関節』『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)、『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)などベストセラー多数。
(W-ANS ACADEMY編集部)
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