「INTERVIEW / COLUMN」記事
スポーツ選手に不可欠な「腸が喜ぶ」食事 免疫力維持へ、「善玉菌」のエサになる食品を摂ろう
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2024.12.27
コンディショニング
食事
特集「冷えと免疫力」第2回、橋本玲子栄養士が腸を元気にする食事法を解説
前回、免疫機能が低下しやすい冬場は特に、腸を健康に保つ食事が大事という話を、川崎医療福祉大の松生香里准教授に伺いました。腸の健康を保つために欠かせないのが、食事。そこで、腸の健康に良い食事や栄養について、公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんに伺いました。
◇ ◇ ◇
風邪をひきやすい冬。コンディショニングのカギを握るのは、腸内を健康に保つこと。「そのためには、腸内に生息する『腸内細菌』のバランスを整える食事が効果的」と公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんは言います。
「腸に数百種類いると言われる腸内細菌は、私たちが食べたものをエサにしています。食事の内容が偏ると腸内細菌のバランスも偏るため、まずはバランスの良い食生活は基本。そのうえで、腸が喜ぶ食べ物を積極的に摂ります」
腸が喜ぶ……とは、腸が元気になる食事のこと。腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分かれ、特に腸に良い働きをする『善玉菌』の数を増やす食事がポイント。
「『腸にいい!』と耳にする発酵食品も、腸が喜ぶ食べ物の1つ。ほか、水溶性食物繊維(水に溶ける食物繊維)や難消化性オリゴ糖(消化管で消化されずに大腸まで届くオリゴ糖)といった成分を含む食品が代表的。腸内細菌がこれらを食べると、『短鎖脂肪酸』という免疫の働きを維持するために大切な物質を生み出します。
短鎖脂肪酸は、ウイルスや細菌と戦い、排除するほか、腸を活発に動かしたり、腸内の有害な菌の増殖を抑えたりします」
腸が喜ぶ食品の摂り方は2つ。1つ目は腸に良い菌を含む食品を摂ること。2つ目は、腸内細菌のエサになる食品を摂ること。1つ目の食品を『プロバイオティクス』、2つ目の食品を『プレバイオティクス』といいます。
「プロバイオティクスの代表的な食品は、乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆菌を含む納豆、みそやぬか漬、キムチ、チーズなどの発酵食品。プレバイオティクスは、難消化性オリゴ糖を含むバナナやはちみつ、玉ねぎ、アスパラガス。そして水溶性食物繊維を多く含む、野菜、豆類、果物、キノコ類、海藻類、イモ類、精製されていない穀物が代表的です」
実は腸内環境を整えるのに役立つ「白いご飯」
そして橋本さんは「特にスポーツをする人は、心身ともにストレスを受けやすいため、一般の人よりも多くの食物繊維を摂ってほしい」と強調します。食物繊維の1日の目標摂取量は、12~14歳で16グラム以上、15~39歳で18グラム以上(日本人の食事摂取基準2025年版から)。食物繊維を含む食品を記事の最後にまとめたので、毎日の食事の参考にして。
「また、『太りたくない』という理由でご飯を食べないのはNGです。お米は免疫を維持するために役立つ、オリゴ糖や食物繊維が豊富。ご飯を抜くと腸内バランスを崩す要因になります。
ちなみに、白いご飯でも茶碗1杯150グラム当たり2グラムの食物繊維が含まれます。毎食、ご飯を食べ、補食におにぎりを1つ食べれば、1日の目標量の約半分がクリアできます。
一方、砂糖や脂質の摂りすぎは腸内環境を悪くするので、食べすぎに気をつけましょう」
お米を摂りたいもう1つの理由は、よく噛むことで食事をした後の代謝量が増え、体が温かくなるため(※1)。実は腸内環境を整えるためには、血行を良くして内臓を温めることも大切。エネルギーが不足すると血流が低下し、体が冷えてしまいます。
「また、筋肉にはたくさんの血液が流れているので、主食とともに筋肉の材料となるたんぱく質をしっかり摂りましょう。
そのほかに、血液の流れを良くするビタミンEを多く含む食品(※2)、そしてしょうがや唐辛子等、体を温める成分を含む食材を料理に使うのもおすすめ。例えば、しょうがは熱を加えると温める効果が高くなるので、しょうが入りの温かいスープはとても良いですよ」
次回は、おすすめのレシピを紹介します!
※1 食事誘発性熱産生とは、食事をした後、安静にしていても代謝量が増大すること
※2 ビタミンEを多く含む食品例……植物油、ナッツ類(アーモンド、落花生)、カボチャ、菜の花、モロヘイヤ、ツナ缶、うなぎのかばやき
(W-ANS ACADEMY編集部)
Hashimoto Reiko
橋本 玲子
管理栄養士/公認スポーツ栄養士
株式会社 Food Connection 代表取締役。サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。姉妹サイトであるスポーツ文化・育成&総合ニュースサイト『THE ANSWER』では、食のスペシャリストとしてアスリートをはじめスポーツをする方々に向けた、食と栄養に関する情報発信にも力を入れている。アメリカ栄養士会スポーツ・ヒューマンパフォーマンス栄養(SHPN)並びに、スポーツ栄養を専門とする国際的なプロ集団(PINES)のメンバーとして海外の栄養士との交流も多い。
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