Home

「INTERVIEW / COLUMN」記事一覧

本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】

「INTERVIEW / COLUMN」記事

  

本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】

著者:長島 恭子(W-ANS ACADEMY編集部)

写真:回里 純子

ヘア&メイク:榊 美奈子

2024.12.18

コンディショニング

月経

 現役女性アスリートが様々な角度から自分のカラダと競技について語る連載「私とカラダ」。第3回はサッカー女子WEリーグの大宮アルディージャVENTUSに所属する仲田歩夢選手です。球際の強さとスピードを武器に10代の頃から年代別日本代表でも活躍。長年にわたってトップレベルで活躍するなかで、日々取り組んでいる体作りやコンディショニングに関する話のほか、生理との向き合い方についても自身の経験を交えながら明かしてくれました。

試合後は2kg以上、体重が落ちるので水分補給はかなり意識

 シーズン中のスケジュールは、午前中はチーム練習、午後はフリーというのが基本。午後の時間をどう使うかは選手個々に任されているので、トレーニングをする選手もいれば、体を休ませる時間に使う選手もいます。オフは試合の翌日。ただし、週末だけでなく平日にも試合が入ってくると、試合翌日もトレーニングが入ってきますね。

 サッカー選手としての自分の強みは、フィジカルの強さ、スピード。また、キック、シュートのパワーはストロングかなと思います。

 体作りやコンディショニングにおいて、大事にしていることの1つは数値です。例えば私の場合、試合後は2kg以上、体重が落ちてしまうので、水分補給はかなり意識しています。また、月に1回、チームで体重や体組成を計測するので、そこで筋肉量や体脂肪量などをチェック。数値を知ることは、自分には何が足りていて何が足りないのか、どんなトレーニングをプラスしたら良いのかなどを、判断する基準になります。

 とはいえ、最終的に大事にしているのは、自分自身の感覚。数値が悪かったとしても、めちゃめちゃ動けていれば、それでいいと思っています。

 食事も自分のなかでバランスを取りながら、割とその日の気分で食べたいものを作って食べていますね。基本は米、肉、野菜を中心に、できるだけたくさん食べること。そして水分補給をしっかりすることを心がけています。

 私は大きな怪我をした経験はないのですが、長い間、重い生理痛に悩まされました。特にひどかったのは、高校から23歳の頃。強い痛みで、過呼吸のようになったり、吐いたりしましたし、家から出られなくなるほどでした。

 痛み止めは服用していましたが、生理が来た瞬間に飲まないと効かないんですね。でも、当時は生理周期も安定していなかったので、飲むタイミングを逃してしまうことも……。結局、腹痛で動けない、練習に行けないということが何度もあり、本当にしんどかったです。

 ただ、すごく悩んではいたけれど、練習を休んでまで病院に行こうとは思っていませんでした。なぜなら、痛み止めさえ飲めば、自分でどうにかしのげると思っていたから。それに高校時代は寮生活で、学校と部活中心の毎日。高校生なりに忙しかったし、自分のなかで生理の問題は、あまり優先順位が高くなかったんです。

ピルを使い始めてから体調のリズムを掴めるようになった

 婦人科を初めて受診したのは、20歳の頃。確か、当時の所属チームのチームドクターに相談したことがきっかけだったと思います。

 その時、婦人科医に相談するなかで、「ピルを使ってコントロールをしてみましょう」ということになりました。実は、薬はあまり飲みたくなかったんですね。でも、「この痛みがずっと続くよりはいい」と考え、使ってみることにしました。

 結果、私にはピルが合いました。自分で月経周期を調整できるので、急な出血に慌てることがなくなりましたし、多かった経血量が減り、痛みもほぼなくなった。ピルを使い始めてからプレーへの支障がなくなり、快適です。

 何より、体調のリズムを掴めるようになり、生理とうまく向き合えるようになったと感じています。

 生理の悩みを抱えている選手は、なるべく早く婦人科を受診したほうがいいと思いますが、そのためには病院に行きやすい環境かどうかの影響も大きいんじゃないかな。

 自分はチームの男性トレーナーに対しても、生理について話ができますが、男性には言いにくいと感じる選手もいるかもしれません。ですから、病院に行く前の段階で、誰もが生理の悩みを気軽に相談できる環境がどこにでもあるといいな、と思います。

 今、WEリーグに所属するクラブは、どこも女性のコーチやトレーナー、スタッフがいるので、相談しやすい環境だと思います。また、怪我をしたら診てもらう整形外科が決まっているように、提携している婦人科もありますし、その情報を選手たちもきちんと把握できています。

 今年、31歳になりました。あまりケアに時間をかけるほうではなかったのですが、若干、疲れが残るようになったので、以前よりもストレッチやセルフケアをするようになりました。

 WEリーグでプレーしている以上、トップリーグの選手としての責任があります。自分のなかでは、動けなくなったり、張り合えない、しんどいと思ったりしたら、やっぱりココにいるべきではない、と考えます。

 サッカーが大好きだから、できるだけ長くプレーを続けたい。そのためには、「プレーの質を保つ」ではなく、むしろ「もっと良くなってやる」ぐらいの気持ちで、練習やトレーニングをやり続けるだけです。

1人でも多くの人に、女子サッカーの魅力を伝えたい

 女子サッカーはプロリーグになり、今季4季目を迎えましたが、観客動員数を含め、まだまだ頑張らなければいけないことがたくさんあります。

 例えば、アメリカでは女子サッカーはメジャースポーツの1つですが、日本ではまだまだ、サッカーは男子のスポーツというイメージが強い。また、女の子の間でもサッカーの人気がバレーボールやバスケットボールを超え、1番に来ることはないのが現状です。

 でも、これまで『アユちゃんのプレーを見て、同じようになりたいと思ったよ』『サッカー始めたよ』と言ってくれる子どもたちと出会いました。その姿を見ると、やはりWEリーグの選手たちが誰かにとっての『憧れの選手』になること。そして、そんな選手が増えるほど、女子サッカーの輪は自然と広がり、未来に繋がるのだと考えます。

 1人でも多くの人に、女子サッカーの魅力を伝えたい。これが、今後のサッカー人生で注力していきたいことの1つです。

 そのためには、いい試合を見せることはもちろん、自分たちのことをもっと知ってもらったり、観客が楽しんでくれるスタジアムの雰囲気作りなどにも、力を入れていきたい。そして、一度でもスタジアムに足を運んでくれた人たちが、『また観に来たいね』と思ってもらえるよう、これからも1試合1試合、プレーしていきたいです。

■仲田 歩夢 / Ayu Nakada

1993年8月15日生まれ、山梨県山梨市出身。サッカーWEリーグ大宮アルディージャVENTUS所属。小学1年生からサッカーを始める。中学時代は地元の女子クラブチーム、フォルトゥナSCレディースでプレー。2009年、女子サッカーの強豪・常盤木学園高(宮城)に進学し、1、3年時に全国高校女子選手権で優勝。2009年から年代別日本代表に選出され、2010年のU-17女子W杯では準優勝に貢献した。高校卒業後、当時なでしこ1部のINAC神戸レオネッサに入団。2021年1月、大宮アルディージャVENTUSに移籍した。

(W-ANS ACADEMY編集部・長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

SUPPORTERSサポーター