柔らかくしなやかに、かつ大きく動かせることができる 小さくても“強いゴム”のようなカラダが、私の理想――陸上・佐藤友佳選手【私とカラダ】
「INTERVIEW / COLUMN」記事
柔らかくしなやかに、かつ大きく動かせることができる 小さくても“強いゴム”のようなカラダが、私の理想――陸上・佐藤友佳選手【私とカラダ】
著者:二宮 寿朗
写真:回里 純子
ヘア&メイク:榊 美奈子
2024.01.31
コンディショニング

現役女性アスリートが様々な角度から自分のカラダと競技について語る新連載「私とカラダ」。第1回目は陸上競技やり投げの佐藤友佳選手が登場します。投てき種目のやり投げは、あらゆる筋肉が必要とされています。身長162センチと世界のなかでは決して大きくないサイズながら理想のカラダをつくり上げ、競技生活のピークを迎えようとしている佐藤選手。トレーニング、食事から思考に至るまでの“流儀”を明かしていただきました。
世界大会の決勝に残るのは身長が高く、腕の長い選手が多い。身長162センチの私はサイズを補うためのカラダづくりが必要だった
やり投げは投てき種目のなかで唯一スパイクを履いて行う競技です。走らなければなりませんし、上半身の力も、そして投げる瞬間に足でブロックをして、そのぶつかった衝撃で上半身を前に出していくため、強靭な体幹も必要になります。
単純に鍛えればいいということではありません。選手ごとにカラダづくりのイメージは異なりますが、私は柔らかくしなやかに、かつ大きく動かせることができる筋肉、つまり“強いゴム”のようなカラダを理想としてきました。

衝撃を受けたときにバーンと上半身が飛び出していく、そのための“強いゴム”。カラダが柔らかい選手であれば固めていくと思うのですが、私の場合は硬いので逆に柔らかくしていかなければなりません。プルオーバーなどウエートトレーニングにおいてもストレッチ要素を多く取り入れるようにしています。

コンスタントに60メートル以上を投げて世界大会の決勝に残るのは、身長が高く、腕の長い選手が確かに多いです。私は身長162センチと世界では小さいため、サイズを補っていくためのカラダづくりを考えていく必要がありました。ただサイズが大きい選手はカラダを使いこなす部分、技術の部分で難しさがあったりする、とも聞きます。選手それぞれに課題はありますし、サイズに大小はあっても“同じ人間”なので特段、コンプレックスとは思っていません。
トレーニングの成果を最大限得るために大事にしていることは、やり切り、出し切ること

カラダづくりにおいて転機となったのが、本場フィンランドで開催された「ワールド・ジャベリン・カンファレンス」への参加です。世界から選手、指導者が集まっていました。
東大阪大学を卒業して小学校、幼稚園で働きながら競技を続け、2018年にニコニコのりに入社しました。やり投げを専門的に教えてもらったことがないなかで、本格的な指導を受けてみて“やり投げってこうなんや”という感覚を少しつかめた気がしたんです。翌2019年に今度は一人でフィンランドに渡って2週間ほどトレーニングをしました。トランポリン上でのもも上げ、スレッド走、メディシンボール投げ……様々なメニューをこなしていきました。

現地のコーチからトレーニングそのものだけではなく、トレーニングの組み方や入れ方といったところを含めて教わりました。成果を感じ取ったなかで久しぶりに自己ベストが出て、2019年の世界選手権出場、2020年の日本選手権優勝へとつながっていきます。そして定期的にフィンランドに行くようになりました。
ただ、どうしてもオーバートレーニング気味になってしまい、自分のなかでうまく折り合いがつかずにケガが続いてしまいます。この経験を踏まえて、オンとオフをしっかり切り替えることを強く意識するようになっていきました。与えられたメニューをただこなすだけでは最大限の効果を得ることはできません。しっかりとパワーを出し切ってやり切る。逆にトレーニングから離れたらやり投げのことはできるだけ考えないようにする。集中力を研ぎすますことはケガ予防にもつながっていくと感じています。

コンディションのバロメーターとしては、腰でしょうか。足でブロックをした衝撃を使って投げるために下半身と上半身をつなぐ腰の状態が良くなければ、当然距離は出しにくくなります。腰が固まらないように同じ姿勢にならない、移動中に座りっ放しにならないようにしています。ツイストの動きも大事ですね。フィンランドや欧州を往復する際はフライトで10時間以上になるので、エコノミークラスの場合、どうしても腰に負担が掛かります。席を立ったり、歩いたりはしていますが、なかなか悩みどころではあります。
競技は“自分育成ゲーム”、楽しみながら取り組むときが一番成長につながる

トレーニングのことに戻れば、ルーティンのようなものは特に決めていません。当てはめてしまうと、特に海外になると対応が難しくなりますから。自分のコンディションや状況に合わせながらやっていくほうが自分には向いていると感じます。ウエートトレーニングで気持ちがちょっと煮詰まったら気分転換を兼ねて山に走りに行くとか、ボートを漕ぐとか、そういった意味でも切り替えを大切にしています。
食事についてもこだわりは特に持っていません。昔、パワーを上げるために意識的に体重を増やそうとした時期がありました。“食べなきゃ、食べなきゃ”と強迫観念に駆られてしまい、“ああ、食事の時間だ”とストレスになったことで体重が増えなかったんです。だったら好きなものを、好きな量だけ食べて、鉄分など足りないものがあればサプリメントで補うように。試合前は生のものを食べないとか、決まりごとがあるとしたら本当にそれくらいです。



海外にいるときもバランスの良い食事を心掛けてはいます。ただ、ときには日本の即席麺にするときだってあります。ヨーロッパのお米を水多めにして炊いてあげると日本のお米に近い感じになります。日本食が恋しくはなりますが、そうやっていろいろと工夫しながらやっていくのも楽しいものです。
楽しいと思うことはとても大切です。練習も楽しんでナンボのところはあります。これは仕事でも何でもそうだと思うのですが、楽しんでいるときが一番成長につながると感じます。“自分育成ゲーム”ではないですけど、ゲーム感覚で競技に向き合っていくことも楽しめる要素になっています。

楽しんでいるときは、自然といい記録も出ます。ああじゃないか、こうじゃないかと考えすぎてしまうと、楽しめなくなって望むような成績も出せません。
ケガがなくなり、30歳を過ぎて体力と技術が安定してきたかなとは感じています。パリオリンピックが控えているなかで、安定して60メートル以上を投げていくことができるようにしたいですね。
何より自分が楽しんで、周りを笑顔にできるような存在になっていきたいと思っています。
【プロフィール】佐藤 友佳 / Yuka Sato
1992年7月21日生まれ、広島県出身。中学時代に陸上を始める。東大阪大敬愛高校時代、7種競技から投てき3種目に切り替え、次第にやり投げ競技に絞る。高校時代、2009年にイタリアで行われた世界ユース陸上競技選手権大会に出場。2011年アジア陸上競技選手権大会で銅メダルを獲得する。東大阪大学卒業後、小学校の職員として働きながら競技を続けていたが、2018年にニコニコのりに所属。現在に至る。2019年、世界陸上競技選手権大会に出場。2020年の日本陸上競技選手権大会で自身初の優勝を飾る。やり投げ自己ベストは62.88メートル(2019年日本陸上競技選手権大会)。
(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)
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