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体重コントロールで心がけた「間食の食べ方」 甘いモノ断ちせず、好きな食べ物がちょっとした幸せに――元トランポリン選手・岸彩乃さん

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体重コントロールで心がけた「間食の食べ方」 甘いモノ断ちせず、好きな食べ物がちょっとした幸せに――元トランポリン選手・岸彩乃さん

著者:W-ANS ACADEMY編集部

2023.10.31

体重管理

トランポリンでオリンピックに出場した岸彩乃さん【写真:荒川祐史】
トランポリンでオリンピックに出場した岸彩乃さん【写真:荒川祐史】

元トランポリン選手・岸彩乃さんインタビュー前編

 高校時時代から日本のトップ選手として活躍した元トランポリン女子日本代表の岸彩乃さん。「小柄でガリガリだった」という中学時代、小柄だった岸さんは食が細く、「トランポリンで強くなるには、体重の重みが足りなかった」と悩んでいたそうです。インタビュー前編では、そんな岸さんに、学生時代の体重コントロールや、大好きなお菓子との付き合い方について伺いました。

 ◇ ◇ ◇

――トランポリンは高く跳び、空中で演技する競技です。岸さんの中学時代の写真をみるとほっそりしていますが、例えば、小柄で体重が軽い方が有利などありますか?

「トランポリンは、着地時の反発力も利用することで、高く跳べます。つまり、体が沈まなければ高く跳べないので、軽いほうがいい、とは言い切れません。

 今回、中学時代の姿を改めて見て、自分でもガリガリでビックリしましたが、当時の私は身長が低く、体重も少なかったため、着地時にトランポリン台に体が沈まなかった。加えて昔の台は今ほど、はずまなかったので、『頑張って(トランポリンを)踏みなさい!』といつも言われていました。

 また、シンクロナイズド種目では体格のよい選手と組むときが多く、大変だったことも覚えています」

――体重差があると演技に影響する?

「とても(影響する)。シンクロ種目でペアを組む場合、まずは技術的に同じレベルの相手を探します。さらに同じ体格の選手と巡り合えればいいのですが、なかなか難しいんです。

 ペアを組む相手と体重差があれば、当然、着地の沈み込みの深さも異なります。すると、空中にいる時間は同じでも、着地するたびに二人の間に0コンマ何秒の差が生じてしまう。

 着地するたびに、タイミングがどんどんずれてしまうので、すごく苦労しました」

――では、成長期に身長が伸びたり体重が増えたりしたとき、パフォーマンスへの影響も大きかったのでは?

「私は中学の3年間で約10cm身長が伸びましたが、ラッキーなことに体形はあまり変わらなかったんです。ですから、成長期は特に苦労した記憶はありません。

 ところが、高校生になると脂肪がつき始めた。ある日、『ちょっと太ったかな』とコーチに言われ、初めて減量を意識しました。肉付きがよくなったのは、成長による体形の変化だけでなく、生活サイクルの変化も大きかったと思います」

コーチに「ちょっと太った」と言われたときに取った対応とは

体重コントロールにおいて、自分の感覚や第三者の目も大切にしていたという現役時の岸彩乃さん【写真:本人提供】
体重コントロールにおいて、自分の感覚や第三者の目も大切にしていたという現役時の岸彩乃さん【写真:本人提供】

――生活サイクルの変化とは?

「一番大きかったのは多分、夕食の時間が変わったことです。中学時代は夜の練習前に夕食を摂り、帰宅後は果物などを軽く食べる、という感じでした。高校では部活動の後、何も食べずに夜帰宅。お腹ペコペコですから、夕飯をガッツリ食べるようになったんです」

――練習量も増えますしね。

「そうですね。練習量が増えてトレーニング強度も上がったからか、自然と食べる量も増えました。でも、中学まではとても小食だったので、体作りの面では悪いことではないと思います。

 でも、コーチに『ちょっと太った』と言われたとき、私は『食べる量を減らそう』ではなく、『ちゃんと体重をコントロールしよう』と思ったんですね。あの時、『痩せよう』『減量しよう』とは考えなかったのはよかったと思います。

 また、世界大会の経験があるコーチのもとで、重りを使ったウエイトトレーニングもスタート。そのおかげで、筋肉もつきました。特に肩回りは明らかに大きくなりましたね。それが今でも落ちなくて、タンクトップは着たくないんです(笑)」

――体重は何を指針に調整していましたか?

「動きやすい、動きにくいという自分の感覚と、体重。あとは第三者からの目も大切にしていました。やっぱり観られる競技なので、『動きが重い』などの指摘には耳を傾けました」

――ちなみに、高校時代の食生活はどんな感じでしたか?

「朝・昼・晩の3食プラス補食です。朝はパンと卵とウインナーのようなもの。昼はお弁当。部活前に、おにぎりやカロリーメイトを食べていました。1日のなかで一番しっかり食べていたのは夕食。家では毎日、肉と魚、両方のおかずが当たり前に出ていましたし、これに野菜の副菜とご飯と味噌汁を食べていました。

 私は比較的、筋力量が多かったのですが、今思うとトレーニングだけでなく、家の食事もよかったのかなと思います」

甘いもの断ちなどせず、大好きなチョコを食べてモチベが上がるスイッチに

自身の体重コントロールについて語った【写真:荒川祐史】
自身の体重コントロールについて語った【写真:荒川祐史】

――体重をコントロールするうえで、気を付けていたことは何でしょう?

「間食の食べ方です。私の実家は常にいろんなお菓子のストックがあり、割とお菓子を食べる家族だったんですね。私自身、お菓子が大好きで、学校でも普通に、友達と持ち寄ったお菓子を食べていました。

 でも、『今日はお菓子を食べたから、明日は控えよう』という感じで、だいたいですが、食べる量はコントロールしていました。ちょこちょことは食べていたので、逆にドカ食いに走らなかったのかなと思います」

――「甘い物がやめられない」と悩まれる人は多いと思います。でも、逆に甘いもの断ちなどをしなかったことがよかったんですね。

「私の場合はそうですね。それに、好きなものを食べると、幸せを感じるし、ちょっと嬉しくなる。大好きなチョコレートを食べることで、『よし、練習に行こう!』と、モチベーションが上がるスイッチにもなっていました。

 それと、私は両親からお菓子を食べて怒られたことがないんですね。そのせいか、食べることへの罪悪感を抱いたことがなく、『隠れて食べる』という発想にもなりませんでした。

 精神的なプレッシャーがなかった分、自分がちょっと気にすればいいと、おおらかに対処できたのかなと思います」

(後編へ続く)

【プロフィール】岸 彩乃 / Ayano Kishi

 1992年10月29日生まれ、石川県小松市出身。5歳からトランポリンを始める。小松大谷高校入学後に頭角を現し、全国高校選手権を連覇。高校3年時の2010年、全日本選手権で個人2位、ワールドカップロシア大会ではシンクロ競技で2位に。金沢学院大学2年時の2012年、ロンドン五輪に出場した。その後、2014年仁川アジア大会では女子個人で銅メダルを獲得。2017年世界選手権では女子個人で銀メダルを獲得し、同種目で日本勢史上初となる表彰台を決めた。2019年世界選手権大会ではシンクロナイズド優勝を果たすなど、国内外で活躍。2021年4月、競技引退。現在、地元・小松市で岸彩乃杯シンクロナイズドトランポリン大会を開催するなど、後進の育成や指導に努める。現トランポリン選手であり東京五輪男子日本代表の岸大貴(ポピンズ)は実弟。

(W-ANS ACADEMY編集部)

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