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女性アスリートのダイエットの基本【理論編】もっと強く、もっと長く健康的にスポーツを(減量成功の大原則、食習慣の見直しリスト、月経不順&無月経の人etc)

「INTERVIEW / COLUMN」記事

  

女性アスリートのダイエットの基本【理論編】もっと強く、もっと長く健康的にスポーツを(減量成功の大原則、食習慣の見直しリスト、月経不順&無月経の人etc)

著者:W-ANS ACADEMY編集部

2023.09.20

体重管理

食事

公認スポーツ栄養士・橋本玲子さんと考えるダイエット

 強度の高いトレーニングを長時間行う部活動生やアスリートは、運動をしていない方以上に食事に気を配らないと「エネルギー不足」と「栄養素不足」に陥る恐れがあります。今回は女性アスリートのエネルギー不足によって引き起こされる問題と、それを予防するための食事と栄養のポイントについて、公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんに伺いました。もっと強く、そして1日も長く健康的にスポーツを続けるためにも、改めて女性アスリートの「ダイエット(減量)」について考えてみましょう!

◇ ◇ ◇

女性アスリートのダイエット【理論編①】
「運動量に見合った食事量を摂る」が
ダイエット成功の大原則

 スポーツをする女性の場合、パフォーマンスアップや見た目を磨くという目的で減量を行う人が多くみられます。しかし間違ったダイエットは健康に影響を及ぼすだけでなく、筋力の減少や持久力の低下、ケガのリスクの増加など、パフォーマンスにも影響を及ぼしてしまいます。

 特に女性アスリートの「利用可能エネルギー不足」は、世界的な問題になっています。

 利用可能エネルギー不足とは「女性アスリートの三主徴」という健康障害の一つ。運動量に見合ったエネルギー量が食事から摂れないと、体がエネルギー不足の状態になります。利用可能エネルギー不足が続くと、規則的にきていた生理周期が「不順」になり、やがて「無月経」や「摂食障害」「骨粗しょう症」を引き起こすリスクが高くなります。

 運動によるエネルギー消費量は運動強度や時間によって異なります。利用可能エネルギー不足を防ぐには、まず、自分はエネルギー量が「足りている」か「足りていない」か、現状を知ることが大切です。

女性アスリートの健康障害の一つ「利用可能エネルギー不足」は様々な問題の原因に【デザイン:野口佳大】
女性アスリートの健康障害の一つ「利用可能エネルギー不足」は様々な問題の原因に【デザイン:野口佳大】

 利用可能エネルギー不足になる大きな要因は主に二つあります。一つは「運動量が多いのに十分な食事が取れていない」。もう一つは「食べても運動量に追い付かない」です。

 体は単純に食べる量が少ないからエネルギー不足になるわけではなく、体に入ってくる量と出ていく量のバランスがカギ。例え自分なりに「たくさん食べている」と思っていても、運動強度が高い、練習量が多いなどの理由で消費するエネルギー量が増加すると、しっかり食べているつもりでも実際は食事量が足りず、知らず知らずのうちに、エネルギー不足になってしまうのです。

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ダイエット(減量)をする女性アスリートは要注意!
女性アスリートの三主徴って何!?
1992年、アメリカスポーツ医学会が女性特有の健康障害として定義された、女性アスリートによくみられる三つの健康障害を表す言葉。その「三つの症状 (主徴)」とは、①利用可能エネルギー不足 ②視床下部性無月経 ③骨粗しょう症であり、①の利用可能エネルギー不足が特に三主徴の発端になります。
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利用可能エネルギー不足を防ぐための食習慣とは?

女性アスリートのダイエット【理論編②】
あなたは十分、食べている?
食習慣の見直しチェックリスト

利用可能エネルギー不足を防ぐため、まずは食習慣を見直しましょう。

摂取エネルギー量が不足しがちの方は、食事や補食のとり方に以下のような特徴がみられます。当てはまる数が多いほど、エネルギー不足になるリスクが高くなります。

食事の量が少なくなると食べたものをエネルギーに変えるときに必要な栄養素、等も不足して、結果、代謝がうまくいかない、体の機能が働かないため、コンディションの悪化やパフォーマンスの低下につながります。この機会に、是非、食習慣を見直しましょう。

 利用可能エネルギー不足を防ぐため、まずは食習慣を見直しましょう。

 摂取エネルギー量が不足しがちの方は、食事や補食のとり方に以下のような特徴がみられます。当てはまる数が多いほど、エネルギー不足になるリスクが高くなります。

 食事の量が少なくなると食べたものをエネルギーに変えるときに必要な栄養素、等も不足して、結果、代謝がうまくいかない、体の機能が働かないため、コンディションの悪化やパフォーマンスの低下につながります。この機会に、是非、食習慣を見直しましょう。

こんな「食べ方」が習慣になっている人は要注意!

●欠食をしている
→朝、出かけるギリギリの時間まで寝てしまう、起き抜けは食欲がわかないなどで、朝食を食べられない人など。

●主食(ご飯、パン、麺類)を減らしている
→「太りたくない」「体重を減らさないといけない」という理由から主食を抜いたり、減らす人。

●低カロリー・ゼロキロカロリー食品をつい選んでしまう
→とにかく「カロリーを減らせばいい!」と考えて、ついつい低カロリー食品を選んでしまう人。

●練習前の食事は軽めに済ませる
→運動前に食べると胃もたれを起こす、集中できないという理由から、食事を軽くしてしまう人。

●食欲がない
→長時間の練習により疲労感が強く、帰宅後も食欲がわかない人、部活動や塾などで帰宅が遅くなり、空腹のタイミングを逃してしまい食が進まない人など。

女性アスリートのダイエット【理論編③】
現在「無月経」や「月経不順」の人は、
BMIなどで現在の体格を確認して

 最後に、現在「無月経」や「月経不順」の人は、エネルギー量が「足りている」か「足りていない」かを判断するのに、体格を示す数値から体の状態をチェックする方法があります。以下の計算式に自分を当てはめて、数値をみてみましょう。

●18歳以上の人は……BMIでチェック!
BMIは、肥満や低体重(痩せ)を判定する数値(体格指数)です。
計算式は【体重kg÷身長m2】。この結果、18.5kg/m2未満の場合、「低体重」に当てはまり、アスリート、一般の方を問わず、利用可能エネルギー不足の恐れがあります。

●18歳未満は……身長別の計算式でチェック!
18歳未満の場合は、身長別の計算式(平田法)に当てはめて、標準体重の90%以上に当てはまるかどうかをチェック。数値が90%に満たない場合、成長期では成長障害が生じたり、運動障害や、意識障害などが発生したりしやすくなります。

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短期集中ダイエットのデメリットとは?
アスリートの減量は、骨格筋量を維持しながら体脂肪量を減らすことが大原則です。極端な食事制限を始めた当初は、目に見えて体重が減少します。しかし、この段階で減っているのは、「体脂肪」ではなく「水分」と「グリコーゲン」。すると、体は急に摂取エネルギーが少なくなり、食事からエネルギーを確保できない分、筋肉を分解してエネルギー源として使います。すると、筋肉量は減少。筋肉は体のなかで最もエネルギーを消費してくれる器官です。筋肉量が減少すれば、当然、痩せにくくなります。さらに、筋力、瞬発力、持久力、体温調整機能なども低下。減らしたい体脂肪は減らないうえ、パフォーマンスが落ちてしまいます。

短期集中のダイエットはデメリットしかありません。筋肉量を維持・アップしながら体脂肪を減らすためには、減量をするタイミングや期間、減量方法などの計画を立て、ある程度時間をかけて減量に取り組むことが大事なのです。
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(W-ANS ACADEMY編集部)

Hashimoto Reiko

橋本 玲子

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

株式会社 Food Connection 代表取締役。サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。姉妹サイトであるスポーツ文化・育成&総合ニュースサイト『THE ANSWER』では、食のスペシャリストとしてアスリートをはじめスポーツをする方々に向けた、食と栄養に関する情報発信にも力を入れている。アメリカ栄養士会スポーツ・ヒューマンパフォーマンス栄養(SHPN)並びに、スポーツ栄養を専門とする国際的なプロ集団(PINES)のメンバーとして海外の栄養士との交流も多い。

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