「INTERVIEW / COLUMN」記事
女子アスリートが最初に覚えておきたい「5つの食事の基本」 食生活チェックリスト7項目も紹介
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2023.07.21
食事
公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんがわかりやすく解説
体重管理をするうえで、大切なことの一つが「食事」。W-ANS ACADEMYで実施した100人の女子大学生アスリートのアンケートでも、9割近くの人が「競技生活に適した食事の知識を得たい」と回答していました。
そこで、今回は女子アスリートが最初に覚えておきたい「5つの食事の基本」を大特集。食事を整えるうえで、最初にやるべきことや食事を考えるうえでの基本ルールを、公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんに教えていただきました!
◇ ◇ ◇
「食べ方を知る」が体作りの最重要ポイント 成長期までは「食事制限」をするのはNG!
スポーツをする人の体重管理とは、競技特性に合った体作りのために筋肉量を増やしたり脂肪量を減らしたりすることが大前提。見た目や体重の印象だけで、「あと2kg痩せたい!」「お腹の脂肪を落としたい!」とやみくもに体重・体脂肪を減らしたり増やしたりしないことが大切です。
注意したいのが「減量」したい人。極端な食事制限や特定の食品を「太りそうだから」と制限する方法は、体調不良やパフォーマンスの低下につながります。
特に、成長期の食事制限はNGです。なぜなら、心身の成長に悪影響を及ぼすうえ、将来にわたる健康被害の要因になるからです。
今回お伝えすることは、「アスリート食」の基本の基本です。
「アスリート」と聞くと「私はプロでもトップレベルの選手ではないし……」と思われるかもしれませんが、部活動に励む人もトップアスリートも、パフォーマンスアップのための食事の基本は同じです。
大事なのは「何を食べないか」ではなく、「何をいつ、どのように、どれぐらい食べるのか」。これからお伝えする、5つの基本を習慣にしていきましょう!
実は食事も練習と同じで「振り返り」が重要
基本その1 食生活の振り返りをする
「ふだん、食事は何を食べていますか?」
これは私がトップアスリートや学生アスリートと面談を行う際、最初に必ず聞いていることです。
実は食事も練習と同じく、「振り返り」がとても重要です。ですから、まずは1週間、毎日、自分の食べたものを書き出してみましょう。記録はノートに書き留める、アプリを活用するなど、続けやすい方法でOKです。
もちろん、おやつや補食、飲み物も忘れずに。すると、食べ過ぎているもの・食べていないものが明確になり、改善点がはっきりします。
合わせて、以下の項目もチェックしてみましょう。
食生活チェックリスト
ふだんの食生活に当てはまる項目をチェック! チェックした数が多いほど、バランスの良い、体脂肪が付きにくい食べ方をしています。
□ 朝食を毎日食べる
□ 食事は主食・主菜・副菜を組み合わせて食べる
□ 昼食は学校給食または自宅から持参したお弁当を食べる
□ 部活の前または後におにぎりやスポーツ飲料などでエネルギー補給をする
□ 夕食は21時前に主食・主菜・副菜を揃えて食べる
□ 毎日、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂る
□ 果物を毎日食べる
□ 炭酸飲料や果実飲料など糖質の多い飲み物は1日1本程度に抑える
□ 22時以降は食べないようにしている
減量したいからといって食事を抜くと体脂肪が増える要因に
基本その2 食事は主食・主菜・副菜の3つを揃えて
多くの人が頭を悩ませることの一つが「栄養バランスの整え方」です。でも、難しく考えなくても大丈夫。エネルギー源となる主食、筋肉や血液など体の材料となる主菜、体調を整え、主食・主菜の働きをサポートする副菜。毎食、この3品を揃えると、栄養バランスは自然と整いやすくなります。
主食はご飯、麺、パンなどの炭水化物、主菜は肉、魚介類、卵、豆腐・豆製品といったタンパク質を指します。
副菜は野菜、海藻類、キノコ類を使った料理で、ビタミン・ミネラルがメインの栄養素。また、栄養素ではありませんが、体重コントロールに欠かせない食物繊維も豊富。副菜に悩む方が多いのですが、サラダや具沢山の汁物でもOKです。
以上に加え、果物、牛乳・乳製品をプラス。果物からは水分、糖質、食物繊維、ビタミン・ミネラルを、牛乳・乳製品からは、タンパク質、ビタミン・カルシウムが補給できます。
果物と牛乳・乳製品も1日3回の食事と一緒に摂るのが理想的。ただし、なかなか難しいと思うので、補食として1日1~3回を目安に摂りましょう。
基本その3 朝・昼・晩の食事を抜くのはNG
実はスポーツをする人は1日3食のうち、1回でも食事を抜くと、エネルギーやタンパク質などの栄養素が不足しやすくなります。
特に朝食は「食欲がない」「時間がない」と抜きがち。食欲や時間がないなかでも、できるだけ食事を口にするよう意識しましょう。例えば、パン派ならハム&チーズを挟む、ご飯派なら納豆&卵かけご飯にして、トマトやキュウリをプラス。これだけで「主食・主菜・副菜」が揃います。
それから、減量したい場合、食事を抜く人がいます。一見、摂取カロリーが少なくなるので痩せると思われますが、欠食は体脂肪が増える要因になります。
食事を抜くと空腹の時間が長くなり、次の食事の際、インスリンの分泌量が一気に上昇。インスリンは余った糖を脂肪として蓄える働きがあるので、結果、体脂肪が増えやすくなります。
また、食べない反動からドカ食いに走ったり、継続が難しくなったりしてしまい、結局は失敗する要因になります。
こまめに必要な栄養補給 補食におすすめの食品って?
基本その4 補食でこまめに栄養補給
スポーツをする女性の場合、1日3回の食事だけでは、必要な栄養素を摂りきれません。これを補ってくれるのが、「栄養のある間食=補食」です。
補食はまた、空腹の時間をなるべく作らないことで体脂肪の蓄積を防いだり、こまめに食べることでエネルギー消費量を上げたりという効果もあります。
うまく選べば甘い食べ物も補食になります。ケーキやクッキー、ポテトチップスなどのお菓子は“たまに”のご褒美に!
補食におすすめの食品
基本その5 不足しがちな栄養素を意識して摂る
ここでは特に女性アスリートに不足しがちな栄養素をあげます。栄養を多く含む食品もいくつか紹介するので、日々、積極的に摂るよう心掛けて。
①炭水化物
女性アスリートはどの種目においてもエネルギー不足の傾向が見られます。特に足りなくなる原因は主食の量にあります。
「炭水化物は太るから」と主食を抜く人が目立ちますが、主食は運動に必要なエネルギー源です。抜けば逆にパフォーマンス低下につながります。最低限、1日3食、プラスご飯と摂り1、2回、おにぎりを補食で摂りましょう。
②カルシウム・ビタミンD・鉄
6~29歳までの一般女性のカルシウム推奨量は1日650~800mg。ところが、日本人の食生活はカルシウムが不足しやすく、女性アスリートの1日のカルシウム摂取量の平均は500~600mgという報告もあります。一般の人向けの推奨量に満たないのが現状です。
カルシウム不足は疲労骨折や骨粗しょう症のリスクを引き起こします。しかも、骨の健康を維持する骨密度は成長期に上昇し20歳ころにピークを迎えます。その年齢までに骨に必要な運動と食事でカルシウムを充分に摂り、骨の貯金をしておくことが必要です。また、カルシウムはビタミンDを一緒に摂ると、体内の吸収率が高まります。
最後は鉄。鉄は血液中で酸素を運搬するヘモグロビンの材料であり、血液中の酸素を筋肉に取り込みエネルギーを生むときに必要な栄養素です。運動量が多く、月経のある女性アスリートは鉄の失う量が多いので、不足しがちです。
(W-ANS ACADEMY編集部)
Hashimoto Reiko
橋本 玲子
管理栄養士/公認スポーツ栄養士
株式会社 Food Connection 代表取締役。サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。姉妹サイトであるスポーツ文化・育成&総合ニュースサイト『THE ANSWER』では、食のスペシャリストとしてアスリートをはじめスポーツをする方々に向けた、食と栄養に関する情報発信にも力を入れている。アメリカ栄養士会スポーツ・ヒューマンパフォーマンス栄養(SHPN)並びに、スポーツ栄養を専門とする国際的なプロ集団(PINES)のメンバーとして海外の栄養士との交流も多い。
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