「INTERVIEW / COLUMN」記事
試合と重なりそうな生理に不安 「次いつ始まるか」を予測する基礎体温の正しい知識
著者:長島 恭子
2023.04.15
月経

「女性アスリートのカラダの学校」―「基礎体温」の正しい知識
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。今回は「『基礎体温』の正しい知識」。
◇ ◇ ◇
そろそろ生理がくるかな……という頃になると、ちょっぴり憂鬱になりますよね。試合や合宿、遠征などが重なりそうな時期はなおさら。「ぶつかるかな? セーフかな?」と考えるだけで、気分がモヤモヤすると思います。
でも、今日から、明日から、生理が始まるよ、とわかるだけでも、気持ちが少し楽になりますよね。実は、毎日「基礎体温」さえ記録していれば、次の生理がいつ始まるかを、誰でもカンタンに予測できます。
「基礎体温」とは、朝起きてすぐに測った体温のことです。
初潮を迎えて以降の女性は、月経サイクルの時期によって基礎体温が変化。体温の低い「低温期」と高い「高温期」をいったりきたりします。体温の変化を把握できると、次の生理や排卵のタイミングが予測でき、「あ、今日か明日、生理が始まるな」とわかるようになります(グラフ参照)。

基礎体温を測る時は、小数点以下2桁まで数値が出る体温計、「基礎体温計」を準備。基礎体温は数値を正確に測る必要があるので、測り方のルールを守りましょう。一番大切なポイントは、目が覚めたら、体を動かす前に体温を測ることです。「たったそれだけのことかぁ!」と思うかもしれませんが、意外と根気が必要。眠気と戦いながらの検温なので、気を付けないと本当に寝落ちします。10~20秒と短い時間で検温が完了する基礎体温計を選ぶと、寝落ちする確率も低くなるのでオススメです。
最初は面倒に感じるかもしれませんが、そのうち体温の微妙な変化を読みとれるようになり、体の変化を観察することが楽しくなってきます。検温の結果を自動的にグラフ化してくれる便利なスマートフォンのアプリもあるので、活用してくださいね。
月経のサイクルを把握できると、不正出血もすぐわかるように

1.就寝時に基礎体温計を枕元にセット。朝、目が覚めたら、起き上がらずに体温計を手にとり、寝たままの体勢で検温。
2.体温計を舌の裏側のつけ根に先端をあてたら、口にくわえて測定スタート。測定後、体温を正しく記録して。
ただ、実際、基礎体温を測ってみると、「低温期」「高温期」にきれいに分かれない場合もあります。検温結果は、気温や体調、測り方などによっても、多少ブレが生じますし、例えばとても疲れた翌日、体温が急にポンッ! と上がることもあります。特に、初潮を迎えてから3~4年は、月経のサイクルも安定していないため、キレイに変化が現れないことはままあります。ですから、1日1日の変化にはあまり神経質にならなくてOK。生理と生理の間の約1か月間に、ザックリと「低温期・高温期」の変化がみられれば、大丈夫です。
もしも基礎体温がほぼ横ばいの状態が続く場合は、月経があっても排卵が起こっていない恐れがあるため、婦人科医に相談を。ただし、思春期や授乳期、閉経間近の女性の場合は、横ばい状態も起こりやすいです。
また、体温の変化から月経のサイクルを把握できると、不正出血があってもすぐわかるようにもなります。不正出血とは、月経期間ではない時にある性器からの出血のこと。以前、「月に3回、生理がくる」と相談に訪れたアスリートがいましたが、病院で検査をしてみると、生理ではなく不正出血でした。つまり、生理と間違えるほど出血する場合もある、ということ。不正出血には、まったく心配のない場合もあれば、深刻な病気のサインである恐れもあります。月経時以外に出血がたびたびある場合は、早めに婦人科で受診しましょう。
実は月経サイクルを把握することで、「イライラしやすい時期」「体重が増える時期」「だるくなる時期」など、スポーツのコンディショニングに欠かせない体と心の情報を知ることもできます。これについては改めて、詳しくお話ししますね。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

Sunaga Mikako
須永 美歌子
日本体育大学教授
日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事、日本トレーニング科学会会長。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)。
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