「INTERVIEW / COLUMN」記事
女子サッカーに潜む「熱中症リスク」とは? 女王ベレーザが徹底、初夏から始まる暑熱対策
著者:長島 恭子(W-ANS ACADEMY編集部)
2025.05.29
コンディショニング

特集「女子スポーツの暑さ対策」第1回、日テレ・東京ヴェルディベレーザの対策法
梅雨が明ければ夏も本番! この時期からの「暑熱対策(暑さ対策)」は、練習と同じくらい大切です。疎かにすれば、疲労が蓄積したり、体が動かなくなったりするだけでなく熱中症になる危険も……。そこで今回は、サッカーWEリーグの2024-25シーズン覇者である日テレ・東京ヴェルディベレーザを取材。コーチと選手たちに、普段どんな暑さ対策を行っているのかを聞きました!(取材・文=W-ANS ACADEMY編集部・長島 恭子)
◇ ◇ ◇
5月17日の最終節で、2024-25シーズンが閉幕したWEリーグ。日テレ・東京ヴェルディベレーザはWEリーグ創設後4シーズン目で初、前身の日本女子サッカーリーグから通算最多となる18回目の優勝を果たしました。
リーグ女王として臨む新シーズンへ、トレーニングは6月下旬~7月上旬にスタート。選手たちの体は、滑り出しから猛暑にさらされることになります。
「まずは暑さに体が順応するよう、リーグ戦が始まるまでの約8週間、しっかり時間をかけて体を作ります。暑熱対策の情報は、選手やスタッフとも共有。現場でコンディションを見ながら、個々にも声がけするよう意識しています」
そう話すのはベレーザと、同チームの育成組織メニーナで暑熱対策に目を配る、今関耕平フィジカルコーチ。今関コーチは毎シーズン、自ら暑熱対策の資料を作成し選手に配布。また、暑さが厳しい時期はチームのLINEグループでも、都度、情報を提供しているそうです。
「2024-25シーズンでは疲労度の高い選手、足がつりやすい選手は練習前後の体重を確認。水分不足が認められた選手に対し、個別に指導するといった対応をしていました。今後は、例えば練習前後の体重測定を徹底する、暑熱対策のミーティングの機会を設けるといった対応も必要かもしれません」
女子チームを指導して感じる「選手間の情報格差」

暑熱環境下では練習時間を涼しい時間帯に移すほか、練習・試合時にアイススラリー(シャーベット状のスポーツドリンク)を用意。練習後はクラブハウスでアイスバスに入る、試合前やハーフタイムに氷水で手掌冷却するといった対策を行っています。
「また、試合時は会場に数台、扇風機も持参。WEリーグで使用するスタジアムのロッカールームはクーラーも効いていますが、効率良く体の熱を下げられるよう、扇風機も回しています。
熱中症や夏バテは、睡眠不足の影響も考えられます。特に試合後は興奮して眠れない選手もいるので、寝つきの悪い選手は睡眠時のクーラーの使い方など、睡眠時の環境についても伝えるようにしています」
今関コーチは以前、クラブチームや高校で男子を指導。自身も子どもの頃はJリーグの育成組織に所属していたため、当時から栄養指導を通じて暑熱対策の指導を受けていたそうです。それらの経験から、女子チームに感じるのは「選手間の情報格差」。ジュニア年代から選手、そしてサポートする家族を含め、暑熱対策の教育が必要では、と言います。
「女子を担当して感じるのは、摂る水分量も食事量も少ない、ということ。暑熱環境下の水分・栄養の不足はパフォーマンスの低下はもちろん、熱中症のリスクにもつながります。
また女子の場合、月経周期の影響で体温が高くなることも考慮する必要があります。自分1人の声かけでは意識づけが難しいので、女性トレーナーや栄養士の方など、いろいろな方と協力しながら、暑熱対策を促すことが大事だと考えます」
女子選手に多い夏季の長袖「熱中症リスクが高くなる恐れも」

もう一つ、男子選手と異なる点が練習や試合時に着用するウェア。女子チームは、夏季も長袖、ロングスパッツを着用する選手が多いと言います。
「理由は日焼けを気にしたり、汗をかいた肌が他の選手と触れるのが嫌だったりとそれぞれです。こだわりを持つのは悪いことではありませんが、熱中症のリスクが高くなる恐れもある。まめに声かけをすることは、選手がそのことを忘れないためにも大切です。
また、育成年代は試合会場にロッカールームがなく、ハーフタイムや試合の前後もテント内や日陰など屋外で過ごすことになります。男子はハーフタイムに氷水で濡らしたビブスに着替え、チームメートにあおいでもらうといった対応も可能ですが、女子チームは難しい。限られた予算のなかでいかに猛暑に対処するかは、今後の課題の一つです」
選手にとって重要なのは、良いパフォーマンスを発揮できるかどうか。暑熱対策の重要性を伝えるには、しっかり準備をして臨む選手たちの存在も大きい、と今関コーチは語ります。
「選手たちは何事も頭できちんと理解するまでやりたがりません。ですから、暑熱対策がパフォーマンスにどれだけメリットがあるのかを、できるだけ言葉で説明するようにしています。その成果か、暑熱対策について自ら質問してくる選手も増え、意識の変化は感じています。ただ、言葉だけでは今一つ伝わり切らないのも事実。率先して暑熱対策に取り組む選手たちが試合で結果を残し、怪我も少なければ、それを見ている周囲の選手たちも意識が高くなると思います」
私の暑熱対策!

FW山本柚月選手 / Yuzuki Yamamoto
長めの入浴でしっかり汗をかきます
「水分補給に関しては、小学校時代からずっと意識するよう言われていましたが、暑熱対策についてもここ1年くらいで様々な情報を得る場面が増えました。個人的に実践していることは、暑さに慣れる期間を含め、夏場は湯船に長く浸かること。元々、お風呂好きですが、好きなアーティストの曲を聞いたり、入浴剤を試したりしながら過ごしています。今、好きなアーティストはシンガーソングライターの日食なつこさん。運動後は炭酸泉が良いと聞いたので、入浴剤は『きき湯』をよく使います!」

FW土方麻椰選手 / Maya Hijikata
暑い季節はリカバリーの大切さを実感!
「暑さに体を慣らす時期は、全体練習だけでなく個人的にも自主練を行い、徐々に強度を上げながら積極的に体を動かすよう意識しています。また、暑くなると食欲が落ちやすいので、昼間どうしても食べられない日は、のど越しの良い麺類や果汁100%のジュースで水分と糖質を補給。気温の下がる夜、夕飯をしっかり食べるよう意識しています。また、特に暑い時期はリカバリーが重要。私の場合、交代浴+睡眠で回復。アプリで睡眠の質を計測していますが、良い睡眠がとれると体の状態も良いので、その大切さを実感しています」
(W-ANS ACADEMY編集部・長島 恭子 / Kyoko Nagashima)
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