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「準備期」にはどんな食事が必要? 7項目で体調チェック、勝負の「試合期」へ補給すべき栄養を知ろう

「INTERVIEW / COLUMN」記事

  

「準備期」にはどんな食事が必要? 7項目で体調チェック、勝負の「試合期」へ補給すべき栄養を知ろう

著者:W-ANS ACADEMY編集部

2025.03.18

コンディショニング

食事

【写真:写真AC】
【写真:写真AC】

特集「ピリオダイゼーションで考える食事」第2回、準備期に摂りたい栄養

 近年、世界のスポーツ界で提唱されているのが、「ピリオダイゼーション」(期分け)にのっとった食事。大会のシーズンに入る前は、ピリオダイゼーションでいう「準備期」(プレシーズン)。ここでの食事はシーズンを通して怪我なく、そしてしっかり動ける体作りが重要です。今回は学生アスリートから日本代表選手までの栄養サポートを行う日本大学の松本恵教授に、準備期に摂りたい栄養について聞きました!

 ◇ ◇ ◇

 新しい環境に移ったり、学年が変わったりする春。競技によって試合期にあたる時期は異なりますが、多くの学生アスリートはピリオダイゼーションの準備期(プレシーズン)にあたるかと思います。そこで今回は、準備期についてお話しましょう。

 準備期の前に移行期(トランスファーシーズン)があります。移行期は前半の「オフ期」と後半の「鍛錬期」に分かれますが、オフ明けの鍛錬期から、新シーズンに向けて筋力や持久力の強化がスタート。続く準備期は、いよいよ試合期に向けて、しっかりと動ける体に整える時期になります。

 もし、「今年はもっと持久力をアップしたい」という課題がある場合、食事から「鉄」を十分に摂り、血液や酸素を運ぶ力を高める必要があります。

 どんなに走り込みをしても、鉄が不足すると貧血を起こし、酸欠状態になる恐れがあります。すると、せっかくハードなトレーニングを行っても、持久力がアップするどころか疲れが抜けなくなり、悪くすると貧血が重くなってしまうのです。

 どんな食事が必要なのかを知るためには、自分の目標を明確にするだけでなく、「自分の体の状態を知ること」が大切です。

1、2か月に一度、継続してセルフチェックを!

 準備期に例えば「最近、下痢がちだな」「爪が荒れているな」など、気になる症状や状態に気づくことで、今の体に合った食事、栄養の摂り方を自分で考えることができます。そして、足りない栄養を含む食品を意識的に摂ることで、練習やトレーニングの成果も出るようになり、長く、大事な試合期を乗り切る体作りにつながるのです。

 そこで今回、準備期に確認しておきたい体調のリストを紹介します。今の自分に当てはまる項目があるかどうか、チェックしてみましょう。

 このチェックリストは、準備期に限らず1年中使えます。1、2か月に一度のペースで継続してセルフチェックを行うと、年間を通して体調管理に役立つのでおすすめ。また、顔色や肌の調子などは家族やチームのメンバーともお互いにチェックしあってみましょう。

(※注)体調不良が長期化する場合は、医療機関を受診し、自己判断で特定の栄養素を過剰摂取しないように注意。特に貧血が疑われる場合は、鉄分の摂取を増加させる前に、血液検査 によって確認をしましょう。

やってみよう!「セルフ体調チェック」

【写真:写真AC】
【写真:写真AC】

 現在、当てはまる項目があるかどうかをチェック。当てはまった項目によって、今、どんな栄養を意識して摂ればよいかがわかります。

□怪我や障害(疲労骨折や慢性的な腰痛など)がある
□日常的なめまい・頭痛・疲労感がある
□トレーニング後の疲労感が強いと感じる
□吐き気を感じたり、食欲不振を感じたりする
□頻繁に下痢をしたり、便が軟らかくなったりする
□尿の回数が多い、または少ない気がする(成人では1日7回前後が正常の目安)
□肌や爪が荒れている

当てはまった項目の栄養のポイント!

怪我や障害のある人
怪我や障害によってトレーニング量が減っている場合、体重の増加を防ぐために食事や補食からのエネルギー摂取を調節する必要があります。特に主食を食べすぎるなどでエネルギーの摂りすぎには注意。逆に骨や関節のコラーゲンの代謝に働く、ビタミンCやD、カルシウムなどのミネラルは十分、補給しましょう。

疲労感が強いと感じる人
内臓も筋肉です。疲労感が強い人、疲れが抜けない人はなるべく内臓に負担をかけないよう、消化吸収の良い食品や汁物、温かい料理を選びましょう。また、ビタミンB群、CやDを意識して摂って。特にビタミンB群はエネルギー代謝に関わるので、ご飯や麺類といった糖質を増やしたら、一緒に増やすと効果的です。ビタミンCやビタミンDは近年、筋肉疲労からの回復や免疫とも関わっていることがわかってきました。

めまい・頭痛・疲労感がある人
めまいや頭痛、疲労感がある人は、日常的に水分摂取が不足していると慢性的な脱水症状を起こしている可能性があります。運動中以外にも、こまめに水分を摂るよう心がけましょう。また、貧血の場合は合わせて、たんぱく質や鉄分、鉄の吸収を促すビタミンCも意識して摂って。

吐き気・食欲不振を感じる人
脂質の多い食品を避けて、食べやすい食事を心がけましょう。また、食欲が落ちると、本来、食事から摂っていた水分も摂れなくなります。運動時に脱水を起こさないよう、例えば温かい汁物や飲み物、果物など、摂りやすい食べ物や飲み物から水分を補給しましょう。胃腸の調子は疲労や心理ストレスによっても影響を受けます。試合や強化トレーニング後の食事では、特に消化の良い料理、お鍋や温かい汁物を選んで。

下痢・軟便が気になる人
冷たい飲料、辛い食品、脂質の多い食品、牛乳・乳製品の摂りすぎに注意。早食いやドカ食いも下痢の原因になります。下痢や軟便は脱水症状を引き起こし、怪我や感染症のリスクも高まります。自身がお腹の調子を崩す際の原因を探って、下痢・軟便をしないように工夫して。

尿が多量または少量だと感じる人
尿が多量の場合、発汗による脱水を起こしやすくなります。トイレの回数が多いと感じる人は、利尿作用の強いコーヒーや紅茶、緑茶といったカフェインを含む飲み物、アルコールの摂りすぎに注意。体内で水分を保持できるように、水分補給は水だけでなく、ミネラルが含まれたスポーツドリンクや塩分タブレットなども使用してみましょう。逆に濃い色の尿が出る場合は、すでに脱水を起こしているかもしれません。速やかに水分補給を!

肌・爪が荒れている人
肌荒れが気になったり、爪の表面がデコボコしたり、白く濁ったり、二枚爪になるなど荒れている人は、水分やビタミン類、特にB群やCの不足が影響していると考えられます。また、爪は鉄などのミネラル不足によって変形する場合もあります。肌や爪の状態が気になったら、こまめな水分補給のほか、野菜、貝類、果物を摂り、ビタミン&ミネラルをチャージ。ビタミンB群は赤身の魚や豚のヒレ肉やささみなど、脂が少ない肉類にも豊富です。

教えてくれたのは…

■松本 恵 / Megumi Matsumoto

管理栄養士/公認スポーツ栄養士。日本大学文理学部体育学科教授、博士(農学)。北海道大学大学院農学研究科を修了後、スポーツ栄養の現場サポートに携わるようになる。サウスオーストラリア大学招待研究員を経て2011年より現職。同大学の柔道部、陸上競技部、トライアスロン部、体操部などの選手の栄養サポートを行うほか、オリンピックでは2021年東京大会、2024年パリ大会でサーフィン日本代表をサポート。また、日本ライフセービング協会ハイパフォーマンスチーム専門スタッフ(栄養士)として活動中。

(W-ANS ACADEMY編集部)

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