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カラダダイアリーで「誰よりも自分を知ろう」 専門家が推奨、心身の状態を毎日“数値化”する効果

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カラダダイアリーで「誰よりも自分を知ろう」 専門家が推奨、心身の状態を毎日“数値化”する効果

著者:W-ANS ACADEMY編集部

2025.01.28

コンディショニング

【写真:写真AC】
【写真:写真AC】

特集「カラダダイアリーをつけよう!」第1回、経験者が語る練習日誌を書く大切さ

 皆さんはその日の練習や試合について、記録を残していますか?  W-ANS ACADEMYがスポーツをするすべての人に提案したいのが「カラダダイアリー(体日記)」です。実はこれを習慣にするだけで、自分自身で体調管理ができるようになるのはもちろん、競技のパフォーマンスアップにもつながるのです。

 そこで、カラダダイアリーで得られることや効果的な記録の方法を大特集! 第1回は順天堂大学で女子陸上部を指導する鯉川なつえ教授に、自身の学生時代の経験からダイアリーのつけかたのアドバイスまで聞きました。

 ◇ ◇ ◇

 長年、順天堂大で女子陸上部を指導してきた鯉川なつえ教授。地元・福岡県の筑紫女学園高校に入学し、バレーボールから競技を転向して陸上部に入部。その後、競技者として大学、実業団で活躍します。

「私が練習日誌をつけるようになったのは、高校で陸上部に入部してからのこと。部員は全員、監督の手作りのノートに練習日誌を書くのが決まりでした。

鯉川先生の高校、大学時代の練習日誌は筑紫女学園陸上部監督の手作り。「見開きで1週間が完結するスタイル。各日には練習量や意欲、練習の消化率や体調などを自己評価するスペースがありました」【写真:本人提供】
鯉川先生の高校、大学時代の練習日誌は筑紫女学園陸上部監督の手作り。「見開きで1週間が完結するスタイル。各日には練習量や意欲、練習の消化率や体調などを自己評価するスペースがありました」【写真:本人提供】

 最初は何を書いていいのかもわからず、練習メニューと『今日はきつかった』とか『うまく走れた』程度の感想を書き留めるので精一杯。すると、『もっと細かく自分のことを書いたほうがいいよ』と先輩たちからアドバイスをいただいたんです」

 その後、「今日は腕振りが良かった」「今日のペースは前半は◎◎だったけれど後半は◎◎だった」など、些細なことでも気づいたら書き留めるように。最初は義務感で書き始めたものの、気づいたら「書かないと気持ちが悪い!」となり、2、3行だった記録も、気づいたら小さな字でスペースいっぱいになるほど書いていたそうです。

「長く続けると、例えば『月経前でお腹が痛いと調子が悪くなるな』とか、『1年の今頃は何秒ぐらいで走っていたかな』『去年はこの大会で誰に負けたんだっけ』とか、練習日誌を開けば、その時の調子や記録、気持ちなど振り返ることもでき、練習メニューに生かしたり試合へのモチベーションにつながったりしました。

 普通の日記はまったく続かないので(笑)、継続できたのは『書かされている』のではなく『自分の意思で書く』ようになったこと。そして、夢中で取り組んでいた競技の成績につながると感じられたのが大きいと思います。結局、大学進学後も高校の監督からノートを譲ってもらい、高校・大学で綴ったノートは全部で15冊。これは、私の宝物です」

ダイアリーを使って『自分マイスター』になろう!

1年生時(左)と3年生時(右)の練習日記。練習内容や体調が主だった1年時に比べ、体調の変化やその時の気持ちなども細やかに記録。自分自身を深掘りし言葉にするスキルが上がっていることが一目瞭然! 【写真:本人提供】
1年生時(左)と3年生時(右)の練習日記。練習内容や体調が主だった1年時に比べ、体調の変化やその時の気持ちなども細やかに記録。自分自身を深掘りし言葉にするスキルが上がっていることが一目瞭然! 【写真:本人提供】

 さて、鯉川教授が実践してきた練習日誌のように、日々、心身の調子や数値を記録する『カラダダイアリー』習慣をつけると、スポーツをするすべての女性にとって体調や月経の管理が自分でできる、競技力向上につながるなど様々な“良い効果”をもたらします。

 とはいえ、高校時代の鯉川教授がそうだったように、「何を書いたらいいのかわからない」「面倒くさくて続かないかも……」と思ってしまう人がいるのも事実。「とりあえず、コレだけ書けばOK!」という項目があれば、教えてほしい!

「すべての競技にあてはまる項目で一つだけ挙げるとしたら、その日の自分の状態を数値で評価(例えば3~5段階評価など)することです。

 コンディショニングで最も大事なのは、自分の体調をなるべく正確に計る力。毎日、数値での評価を続けることでその力を高められます。それに、自分のやったことを他人に評価されない点もダイアリーの良いところです」

 ここに、「今日はお腹がゆるかった」とか「甘いものが無性に食べたくなった!」など、体調や練習時の気持ちなど、気づいたことを一言だけでも書き込めたら、スタートとしては上出来。

「ダイアリーは他人に見せる必要のない、自分だけの記録です。頑張ったこと、嬉しかったことだけでなく、体調が悪かった、部活でちょっと嫌なことや悲しいことがあったなども正直に書いていい。

 ネガティブな感情も書くことで表に向かって発散でき、心の安定にもつながります。私自身も読まれたら困るような気持ちを洗いざらい書き込んでいて、今読むと『よくこんなこと書けたな』と思います(笑)」

 できるだけ記録する癖をつけたいのは、「月経の開始日と終了日」と「便通の有無」。月経や便通は「ないと困る」のに記録しないと、いつあったかを忘れてしまう人がとても多い、と言います。

「記録をしておかないと、気づいたら月経不順になっていたり、いつから便秘だったかがわからなくなったりと、大変なことになります。この二つは自分の体を守るための最低限の記録です。自分だけにわかるマークなどでいいので、トイレに行ったら書き留める癖をつけるといいですよ」

「小さな目標」と「大きな目標」を設定して書き込む

「練習日誌の最後にあった白紙の10ページには出場した大会記録や反省など何でも書いていました」。当時の記録や、自身の記事が掲載された新聞記事の切り抜きなども日誌のなかに一緒に保存【写真:本人提供】
「練習日誌の最後にあった白紙の10ページには出場した大会記録や反省など何でも書いていました」。当時の記録や、自身の記事が掲載された新聞記事の切り抜きなども日誌のなかに一緒に保存【写真:本人提供】

 また、毎日ではなく、週や月、年間、そして将来の目標をフリースペースなどに書き込むことも大事、と鯉川教授。

「『小さな目標』と『大きな目標』を設定すると、やるべきことが明確になり、また競技へのモチベーションが高まります。ちなみに、高校時代の私は練習日誌の表紙の裏に『インターハイ優勝!』と書いていました(笑)」

 小さな目標とは、例えば毎日部活を休まない、遅刻しない、腹筋は10回必ずやろうなど。風邪をひいて1週間休んだとしても、また振り出しに戻って継続すればいいようなフレキシブルな目標のこと。

 そして大きな目標は、レギュラーになる、インターハイや国体、全国大会やオリンピック出場、日本記録や世界記録を出す、金メダルを取る、自分の将来像など、思い浮かんだ実現したい目標や夢を何でも書いてほしい、と言います。

「自分が良いと思うことを選択し続けるのがスポーツです。誰よりも自分を知り、セルフコントロールができると、結果、良いパフォーマンスにつながります。トップアスリートはそれができるから強い。体の記録をつけることは『自分マイスター』になるトレーニングなんですよ」

鯉川教授の『これだけは記録しよう!』
【1】今日の調子
体調やトレーニング、あるいは試合などその日の自分をトータルで数値評価(3段階、5段階など)。プラス、体調や気持ち、天気など気づいたことを一言メモ。

【2】月経&便通
月経は開始日と終わりの日と、気になる症状があればメモを。便通は『正』の字で回数がわかるようにしたり、「朝食後」「部活前」などタイミングを書いたりすると◎。

【3】小さな目標・大きな目標
1週間、1か月ごとの「小さな目標」や年間、学生生活や競技生活、そして将来実現したい「大きな目標」をダイアリーの余白やフリーページなどに書き込み、決意をこっそり宣言!

教えてくれたのは…

■鯉川 なつえ / Natsue Koikawa

順天堂大学教授、博士(スポーツ健康科学)。女子陸上競技指導者、スポーツ解説者。筑紫女学園高校入学後、陸上競技を始める。高校3年時(1990年)に横浜国際女子駅伝の代表、順天堂大在学中の93年、ユニバーシアードバッファロー大会で女子長距離走日本代表に選出され、卒業後は実業団に進む。競技引退後、大学院へ進学。他大学の非常勤などを経て順天堂大学陸上競技部の女子中長距離コーチに就任、現職に。現在、同大学の女性スポーツ研究センター副センター長を務める。

(W-ANS ACADEMY編集部)

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