「INTERVIEW / COLUMN」記事
汗のかきすぎを気にしてはダメ! 熱中症&バテ防止のための正しい「水分補給」――特集「夏の汗対策」
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2024.07.16
コンディショニング

公認スポーツ栄養士・橋本玲子さんに聞く、運動時の水分補給のポイント
肌や髪が気持ち悪い、メイクが崩れる、においが心配……などなど、暑い季節になると特に気になり始めるのが「汗」。しかも、汗の「かきすぎ」を気にして水分補給を怠れば体調不良の原因になります。そこで汗っかきの季節も、部活動に集中できるよう、快適かつ清潔感のある毎日を送るためのヒントをお届け! まずは、部活動の正しい水分補給について、公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんに聞きました。
◇ ◇ ◇
皆さんは、汗にはどんな役割があるのか、知っていますか?
汗の最も大切な役割は「体温調節」です。私たちの体には体温が上がりすぎないよう、汗をかくことで体内にこもった熱を外に出す(放熱)というシステムが備わっています。かいた汗は蒸発する時、体の表面の熱を奪い、熱を冷ましてくれます。ですから、気温が高くなったり、運動によって体内に大量の熱が発生したりすると、私たちはたくさん汗をかくのです。
逆に、汗をうまくかけないと、体温はどんどん上がり、熱中症を起こします。熱中症になるとめまいや頭痛、吐き気、筋肉痛や筋肉のけいれん、集中力や持久力の低下などに始まり、悪化すると死に至るほどの深刻な状態に。ですから、特に体温が上昇しやすい運動中は「たくさん汗をかくこと」はとても大切なのです。
さて、汗をしっかりかくためには、「こまめな水分補給」が欠かせません。水分を補給すると、まず冷たさで体温の上昇を抑え、かつ、汗となって体の表面の熱を奪い体温を下げてくれます。以下3つのポイントを抑えながら、運動中はもちろん、練習前、練習後も意識して水分を摂りましょう!
Q.水分はいつ、どのぐらい飲むのが正解?
A.運動の2~4時間前からチョコチョコ飲みで水分をチャージ。
水分補給の適量を知るには、日頃から部活動や運動の前後に体重を測る習慣をつけることをおすすめします。練習中の水分補給の適量は、体重減少が体重の2%以内におさまることが目安です。運動後、どのぐらい体重が減っているかをチェックしましょう。
例えば、体重55キロの方でしたら減量幅が1.1キロを超えると脱水状態に。減った量=体から失われた水分量と考え、運動前・運動中、そして運動後とこまめに水分を摂りましょう。
また、汗をしっかりかくためには、運動を始める時に水分が体内に十分、蓄えられていることが大事。ですから、運動の2~4時間前からちょこちょこと水分補給をしましょう。運動前に飲んでおきたい水分量は体重1キロあたり5~10ミリ。体重55キロであれば、275~550ミリの水分が目安です。
水分だけを摂っていると危険な状態に…
Q.水分補給時は何を飲んだらいい?
A.1時間以上、運動する時はスポーツドリンクで電解質も補給!
実は、暑い時期に長時間運動し、汗をたくさんかいた時は、水やお茶だけで水分を補給しても脱水や熱中症の予防にはなりません。
汗には体液に含まれる電解質(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム)という成分が含まれ、多量に発汗すると水分とともに排出されてしまいます。
すると、水分だけ摂っていると「このままだと、体液の濃度が薄まってしまう!」と体が察知。結果、脱水から回復していないのに喉の渇きがおさまり、水分不足を自覚できなくなってしまうのです。
1時間以上の運動を続ける時は、たくさん汗をかくので、水分だけでなく電解質も含む飲料を摂りましょう。その代表が市販のスポーツドリンク。スポーツドリンクは糖質も含むため、腸から素早く水分を吸収。そして体内の保水率も高めてくれる、という利点もあります。
1点注意してほしいのは、市販のスポーツドリンクは薄めずに飲むこと。なぜなら、そのまま飲むことで、理想的な成分バランスになっているからです。「甘みが口に残って気になる」という場合は、飲んだ後に少し水を飲みましょう。
Q.水分の温度はどのぐらいがよい?
A.運動時は冷たいほうがベター、食事の時は温かいものを摂って。
運動前、運動中や運動直後は、体温の上昇を少しでも抑えたいので、冷たく冷やした飲み物をおすすめします。また、体がほてっていると、冷たいほうが飲みやすく、量もしっかり摂れます。
ただし、それ以外の時間は、冷たい飲み物ばかり飲んだり、クーラーにあたったりで、体が冷え切ってしまう傾向があります。例えば食事の時は温かい味噌汁、スープを摂る、食後も温かいお茶を飲むなど、体を冷やさないようにすることも、バテ防止に大切です。
(W-ANS ACADEMY編集部)

Hashimoto Reiko
橋本 玲子
管理栄養士/公認スポーツ栄養士
株式会社 Food Connection 代表取締役。サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。姉妹サイトであるスポーツ文化・育成&総合ニュースサイト『THE ANSWER』では、食のスペシャリストとしてアスリートをはじめスポーツをする方々に向けた、食と栄養に関する情報発信にも力を入れている。アメリカ栄養士会スポーツ・ヒューマンパフォーマンス栄養(SHPN)並びに、スポーツ栄養を専門とする国際的なプロ集団(PINES)のメンバーとして海外の栄養士との交流も多い。
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