「INTERVIEW / COLUMN」記事
冷える冬、寒い日のウォーミングアップの基本 短時間でパフォーマンスをアップさせるポイントは?
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2023.12.28
コンディショニング
「冷え」特集第2弾! スキー日本代表トレーナーを務めた北海道大学の寒川美奈先生に聞く
年末になり、いよいよ寒さが身に染みる時期に突入。「手足がかじかむ」「体が冷えすぎて肩がこる」など、スポーツをしている・していないにかかわらず、多くの女性が「冷え」に悩まされる時期がやってきました。
「冷え」特集の第2弾は、寒い日のウォーミングアップ。教えてくれたのはスキー日本代表のトレーナーを務めた北海道大学の寒川美奈先生。短い時間でパフォーマンスをアップするためのポイントを聞きました!
◇ ◇ ◇
気温が低くなると、体が冷え、手足がかじかんだり、体に力が入ったりと、動きが悪くなる実感があると思います。事実、寒さはパフォーマンスの低下に直結。外気温が10度と25度の環境下で比較すると、10度の環境下ではパフォーマンスが落ちる、ということが、これまでの研究で示されています。
冷えによるパフォーマンスの低下を防ぐには、ウォーミングアップによって体の内側から温め、血流をアップすることが有効。なかでも効率のよい方法が、体を動かしながら筋肉を伸ばす、「ダイナミックストレッチ」です。
ダイナミックストレッチの効果を得るには「動かし方」にコツがあります。それは、反動を使って、いい加減に行わないこと。自分の筋肉で、関節を大きく動かす。これを意識しながら行うことで、筋肉がしっかり温まります。
そして、寒い日は特に、2つの大きな関節、肩関節(肩甲骨)と股関節を重点的に動かしましょう。肩関節を動かすと肩甲骨周りからひじにかけて、股関節は背中から腰、ひざにかけて、大小様々な筋肉をいっしょに動かすことが出来ます。すると、手先・足先まで素早く、しっかりと血液が行き届き、動きも短時間でよくなります。
また、冬場は体の末端から冷えやすいので、手先・足先を温めます。試合前などで動けない場合は、携帯カイロなどで手足を温めるのもいいでしょう。それから、頭や首から寒さを感じやすいので、帽子やネックウォーマーをつけるのもおすすめします。
とにかく、体が冷えているなと感じたら、休まず常に体を動かすこと。ウォーミングアップの効果は一定時間続きますが、寒い環境ではまた冷えてしまいます。このようなときも、肩や股関節を大きく回したり、体幹を前後左右に動かしたりと、大きな筋肉を動かしましょう。
最も知ってほしいのは「それぞれが何を目的にやっているのか」
さて、筋肉を温めるにはダイナミックストレッチがよいのですが、筋肉の柔軟性を上げるには一般的に行われているスタティックストレッチ(静的ストレッチ)がより効果的です。
寒い日はどうしても筋肉が硬くなります。そこで寒い日のウォーミングアップでは、まずランニングなどで筋肉や体の深部を温めてから、筋肉を伸ばすことが大切です。
「スタティックストレッチは運動パフォーマンスを低下させることがある」と聞いたことがあるかもしれませんが、筋の働きを司る神経系への影響は時間がたてば戻ります。ゆっくりと長く行うような静的ストレッチは神経系へ影響しやすくなるので、ストレッチ時間は短めに行うようにしましょう。
また、スタティックストレッチの後にダイナミックストレッチを行うと、パフォーマンス低下から回復しやすくなります。そのため、スタティックストレッチ後にはダイナミックストレッチを行うようにします。
それから、アップが終わった時点で「体が温まりきれていないな」「足りないな」と感じたら、仕上げにジャンプなど少し強度の高い運動をプラス。ジャンプは神経系の働きを高めるうえ、全身の筋肉を使う動作です。全身が温まり、動きの反応もグッとよくなります。
今日お話しした内容は、「すでにチームで行っている」「行っていた」という方も多いと思いますが、ここで最も知ってほしいのは、「それぞれが何を目的にやっているのか」です。
これを理解すると、「今日はどんなことを、どこを重点的にやればいいかな」と、体の状況を考えながら、自分でいいコンディションを作れるようになりますし、ケガの予防にも繋がります。大事な試合で練習の成果を発揮するために、日々の体の変化に気づくところから実践してみて下さい。
教えてくれたのは…
■寒川美奈先生 / Mina Samukawa
北海道大学准教授、博士(理学療法学)。日本オリンピック委員会医学サポート部門員、全日本スキー連盟情報医科学部トレーナー部会長、国際スポーツ理学療法学会理事、日本スポーツ理学療法学会副理事長。スポーツ理学療法学・運動療法学を専門家として教鞭を執るほか、スポーツ外傷・障害の予防や運動療法の有効性、女性の健康支援を軸に、スポーツ現場や臨床での課題解決に繋がる研究を行う。また、日本選手団トレーナーとして五輪5大会帯同。
(W-ANS ACADEMY編集部)
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