「INTERVIEW / COLUMN」記事
世界的に提唱される「ピリオダイゼーション」って何? 1年を通した“戦略的”食事法を専門家が解説
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2025.03.18
コンディショニング
食事

特集「ピリオダイゼーションで考える食事」第1回、計画的に食事・栄養を摂る考え方
体作りやコンディションの維持のために欠かせない食事。スポーツ界では近年、1年を通して考える「ピリオダイゼーション」(期分け)にのっとった食事が世界的に提唱されています。そこで、学生アスリートから日本代表選手まで、様々な競技の栄養サポートを行っている日本大学の松本恵教授に、ピリオダイゼーションで考える食事について聞きました!
◇ ◇ ◇
近年、スポーツ界では世界的に「戦略的に栄養を摂ろう!」と提唱しています。戦略的とはどういうことかというと、「1年間の競技の活動に合わせて、計画的に食事・栄養を摂る」ということです。
以前は、例えば「試合の前後に糖質をどう摂るか」「筋肉を作る時や減量する時は何をどのぐらい食べればよいか」など、「ケースバイケース」で自分に合うものを取り入れる考え方が主流でした。しかし2019年以降、より長期的なスパンで食事の摂り方を考え、体作りやコンディションの調整に生かそう、という考え方に移行しています。
それが今回紹介する、「ピリオダイゼーション」にのっとった食事です。
学生の部活動もプロも、競技をやっている選手たちは皆、その年その年でピークとなる試合や大会を設定し、個々の、あるいはチームの目標達成に向けて、競技に取り組むと思います。その際、1年間を「準備期(プレシーズン)」「試合期(インシーズン)」「移行期(トランスファーシーズン)」と大きく期分けし、さらに週ごとに、または1日の中でも、それぞれの期間や時間に適した練習やトレーニングを計画し、実施していく。これを「ピリオダイゼーション」と言います。
筋肉や血液など、体を構成するもとであり、体を動かすエネルギー源となるのは、食事です。
練習やトレーニングと同時に、食事もピリオダイゼーションに合わせて考える。そうすることによって、体作りやコンディションの調整をよりうまく進めていき、試合で最大限、力を発揮していこうと、今、世界的に提唱されているのです。
勝負飯に頼るのではなく、日々の積み重ねこそが大事
そもそも、食事は薬とは異なります。栄養を吸収し、体のシステムが増強されるまでには早くても2週間、免疫力を高めるならば1か月以上はかかると言われています。今日、何かを食べたからといって、急に元気になったり体の状態が変わったりすることはありません。
例えば、「明後日は試合だから、今のうちに免疫力を上げよう!」とヨーグルトを食べても、急にお腹の調子は良くなりませんし、それどころか、急にいつもと違うものを食べることで、体調に悪影響を及ぼすこともあります。
選手やコーチたちと話していると、「何を食べれば強くなりますか?」など、食事を「ポパイのほうれん草」のようにとらえている人が多いと感じます。
しかし、練習やトレーニングを継続することで、競技力が向上したり、筋肉量がアップしたりするのと同じで、食事も日々の積み重ねが最も大切です。これを機に“勝負飯”に頼るのではなく、競技や目標に合った食べ方を自分で考え、1か月、2か月という長いスパンをかけて、選んだり、食べたりする習慣を身につけてほしいと思います。
次回は具体的に、準備期(プレシーズン)の食事について、お話しましょう。
教えてくれたのは…
■松本 恵 / Megumi Matsumoto
管理栄養士/公認スポーツ栄養士。日本大学文理学部体育学科教授、博士(農学)。北海道大学大学院農学研究科を修了後、スポーツ栄養の現場サポートに携わるようになる。サウスオーストラリア大学招待研究員を経て2011年より現職。同大学の柔道部、陸上競技部、トライアスロン部、体操部などの選手の栄養サポートを行うほか、オリンピックでは2021年東京大会、2024年パリ大会でサーフィン日本代表をサポート。また、日本ライフセービング協会ハイパフォーマンスチーム専門スタッフ(栄養士)として活動中。
(W-ANS ACADEMY編集部)
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