「INTERVIEW / COLUMN」記事
偏差値70超スイマー「授業中に寝たことはない」 ハイレベルな進学校で文武両道を支えた時間活用術――競泳・松本信歩選手
著者:長島 恭子(W-ANS ACADEMY編集部)
2025.05.08
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特集「勉強と部活動の両立」、松本信歩選手(競泳)インタビュー前編
競技と学業の両立は、日々全力でスポーツに取り組む多くの学生アスリートにとって永遠のテーマと言えるもの。部活動後に自宅へ帰り勉強をしようと思っても睡魔に襲われてしまう……という悩みもよく聞こえてきます。一方で、競技でも学業でも好成績を残しているアスリートがいるのも事実。そんな文武両道を実践する人たちの姿に学ぶ今回の特集。競泳女子200メートル個人メドレーで昨夏のパリ五輪に出場した松本信歩選手(あいおいニッセイ同和損保)は、偏差値70超の進学校から早稲田大学に一般入試で合格し、在学中には宅建や行政書士の資格も取得したことで話題になりました。中高生年代から国内トップスイマーでありながら、学業でも好成績を残してきた秘訣とは? 前編では当時の生活や勉強法を振り返ってもらいました。
◇ ◇ ◇
――松本さんは中学時代から進学校(東京学芸大学附属竹早中学→東京学芸大学附属高校)に通っていましたが、水泳と学業の両立に苦労した時期はありましたか?
「高校時代は結構、大変でした。というのも、高校時代は週6日、学校から所属チームのプールまで1時間かけて通っていたのですが、平日は16時半集合。授業が終わるのは15時、ホームルーム終了のチャイムが15分だったので、その15分後には電車に乗らないと間に合わない。しかも、学校から駅まで徒歩15分の距離だったので、毎日チャイムと同時に駅まで走っていました(笑)」
――当時はどんな練習スケジュールでしたか?
「月~金曜は1部、土曜は2部練習、そして日曜はお休みです。平日は17~19時まで泳ぎ、陸トレがある場合はその後、30分程度ウエイトトレーニングをやっていました。私の所属チーム(東京ドームスポーツ)は、他のチームと比べると練習時間は比較的短かったので、帰宅後にまとまった勉強の時間が取れました。
とはいえ、夕飯とお風呂を済ませた後、学校の課題をやると寝るのはいつもギリギリ24時前。その日のうちに寝られるようにはしていましたが、睡眠時間は7時間程度でした。アスリートとしてはもうちょっと寝ないと回復しないなと思いつつ、最低限の睡眠時間は確保して、何とかやっていたという感じです」
朝の通学時間を有効活用、自らにかけたプレッシャー

――高校時代から、競技のためにしっかり寝ることを意識していたんですね。
「そうですね、やっぱり寝ないと集中力が持たないですから。たぶん私、授業中に寝たことはないと思います」
――すごい……。今、自分の高校時代を振り返り、反省しました(笑)。
「でも、めちゃくちゃちゃんとやる時もあれば、やっぱり疲れが溜まってしまい、授業中、何を言われても全然頭に入ってこない日もあります。『今日はちょっと無理だな……』と思ったら、最低限の勉強はやりつつ、『明日、復習するか』という感じに力を抜いていましたよ。ただ、当時から無駄にテレビとか観る時間があるなら、寝たほうがいいと思っていましたね」
――例えば時間の使い方など、忙しいなかで勉強時間を確保するために工夫されていたことはありますか?
「高校時代は毎日、学校の課題をこなすだけでいっぱいいっぱいだったので、どうすれば効率良く勉強ができるかを考えました。例えば朝の通学時間は、その日の小テストの勉強時間にあてていました。電車に乗っている時間は決まっているので、『この時間内に覚えなきゃダメだ!』と、自分にプレッシャーをかけて頭に叩き込みました。それからノートは『キレイに取ろう』ではなく、自分の頭が理解できるように書くことを意識。で、授業中に覚えてしまう」
――すごい集中力!
「授業の長い時間、ただ黒板に書かれたものをノートに書き写すだけでは、ちょっともったいないと思って。それなら、授業中に書きながら覚えるほうがいいな、という感じでした。それからテストの前は、『ここは覚えなきゃいけない』というポイントを別の紙にまとめて書き出し、それだけを覚えればいい、という風にしていましたね」
部活も勉強も「その時にできる100%をやればいい」

――学校の課題をやるのは、夕飯と入浴後と言っていましたが、眠くなりませんか?
「眠いけれど終わらせなければいけないので、無理やり集中して課題をこなしました。逆に課題や試験勉強がなくて時間に追われていない時や、ちょっと頑張りすぎているなぁと思った時は少し早めに寝るなど、休息の時間を増やしてバランスを取っていました」
――そこで遊びに行くのではなく、休息を選ぶんですね……!
「元々、休みがあれば一人で家のなかで一歩も動かずに休むのが好きなタイプなんです(笑)。友達とは学校で一緒にお昼を食べたり、おしゃべりをしたりできるので、オフの日は家で寝るとかテレビを観るとか、そんな感じで過ごしていました。とにかく、エネルギーをあまり使いません(笑)」
――やる時はやる、休む時は休む、とメリハリのある生活を心がけていたんですね。
「学校にいる時間は勉強と友達に、水泳の時間は水泳に、休息の時間は休息にと、部活だろうと勉強だろうと、とにかく、その時にできる100%をやればいいかなと思っています。もし『今日はあんまりやる気が出ないな』という時も、やる気が出ないなかで100%でやればいい。常に完璧にやる必要はないと思います」
(後編へ続く)
■松本 信歩 / Shiho Matsumoto
2002年4月3日生まれ、東京都出身。5歳で水泳を始める。東京学芸大附竹早中→東京学芸大附高→早稲田大。24年3月に臨んだ国際大会代表選考会にて、女子200メートル個人メドレーで2分09秒90のタイムで2位となり、派遣標準記録をクリア。2024年パリ五輪出場を決め、本大会では競泳女子200メートル個人メドレーで準決勝に進出した。25年4月、あいおいニッセイ同和損保に入社。高校1年から所属していた東京ドームスポーツのプールを拠点に、競技生活を続ける。また、早大在学中に様々な資格取得にも取り組み、現在、行政書士、宅地建物取引士、簿記2級、スペイン語検定5級などを保有する。
(W-ANS ACADEMY編集部・長島 恭子 / Kyoko Nagashima)
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