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下着・ナプキンが透ける不安「私はずっと気にしていた」 ネットで検索しても答えなき女性アスリートの悩み――陸上・佐藤友佳

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下着・ナプキンが透ける不安「私はずっと気にしていた」 ネットで検索しても答えなき女性アスリートの悩み――陸上・佐藤友佳

著者:神原 英彰(W-ANS ACADEMY編集部)

2025.04.02

コンディショニング

月経

陸上女子やり投げで活躍した佐藤友佳さん【写真:松橋晶子】
陸上女子やり投げで活躍した佐藤友佳さん【写真:松橋晶子】

「W-ANS ACADEMY」オンラインイベントに出演 インタビュー前編

 スポーツを楽しむすべての女性を応援するメディア「W-ANS ACADEMY」が国際女性デー特別企画として3月9日に実施したオンラインイベントに、陸上女子やり投げで活躍した佐藤友佳さんが出演。「月経とコンディショニング」をテーマに現役時代の経験とともに、昨年11月に入籍し、現在は妊娠5か月であることを明かしました。終了後、「W-ANS ACADEMY」のインタビューに応じ、自身の月経の体験談を打ち明け、さらに陸上界の女性アスリートの環境について語りました。(前後編の前編、聞き手=W-ANS ACADEMY編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

――MCの元競泳日本代表・伊藤華英さん、専門家の日体大・須永美歌子教授と登壇。さまざまな体験談の発信や意見交換がありました。感想を聞かせてください。

「こういうイベントで生理の経験を話すのは初めてでした。伊藤さん、須永先生とはイベントの前後もお話をさせてもらって、先輩女性アスリートとしての経験を聞かせてもらい、勉強になりました。須永先生が説明してくださった(資料の)スライドもすごく分かりやすくて、私自身、自分の月経について見直す機会になりました」

――今回イベントに参加しようと思ったのはなぜでしょうか。

「私自身が現役時代に悩んでいたので。ネットでは見つからない情報があったんです。やっぱりアスリートの月経はなかなか見つからない。女性としての月経の悩みは情報がいっぱいあるけど、本当にコアなところ、例えば『試合中に生理が来たらどうする』『ナプキンはどんなものがいい』と調べても出てこなかった。元アスリートとして、少しでも今の女性アスリートに役立つ情報が発信できれば。たとえ、参考にならなくても同じ悩みを持っている人がいるだけで安心することも私自身あったので。女子アスリートの方たち、そのコーチも含めて、お役に立てればという気持ちで参加させてもらいました」

――イベントでは切実な経験も明かしてくれました。やり投げは1時間の競技がある中で『スパイクを脱ぐのが煩わしい』『すぐに自分の投てきの順番が来る』との理由で、トイレに行きづらくナプキンを代えられないという話も。外から見ているだけでは分からない不自由さが現場の選手たちにはあると感じました。

「なかなか女性同士でも生理に関して話すことがなく、本当にそれぞれ悩みが違うので。私の場合は個人種目だし、合宿も男女混合が多かった。なので、オープンにみんなが話していたわけではないですが、(経血の)漏れや(ナプキンの)ズレなどは共通の悩みとしてあったと思います」

――そもそもアスリートも月経に関する基礎的な知識を学ぶ機会の少なさも課題といわれています。佐藤さんは保健体育の授業以外にありましたか?

「保健体育で学んだ、プラス、自分の症状をネットに入れて検索するくらいです。強化選手に入ってからはJISS(国立スポーツ科学センター)や日本陸連が発信している情報から学ぶことはありました。でも、悩みは本当に個々それぞれなので婦人科を受診して先生とお話をする機会がないと、個別の対応はできないと感じました。私が初めて婦人科を受診したのはJISS内のクリニックで28歳の時でしたが、もうちょっと早く受診しても良かったかなとは思います」

――佐藤さんの場合はトップアスリートなので、JISSという相談しやすい環境がありました。しかし、地方拠点や部活生など環境によって格差は拭えません。

「そうですね。どうしても偏見もある。例えば、婦人科に行くことが中高生だったら妊娠していると思われたり、ピルを服用することは避妊のためにやっていると思われたり。なので、私自身も婦人科の病院はハードルが高くて足が進まなかった。JISSだったから私は行けた部分がある。私がアスリートとしてピルを服用するのは実際に相談しに行って、その知識を得られたからなので。ただ、行ってみて気づいたのが、どこの婦人科でも行っていいんだということでした」

生理中の競技に不安「ユニフォームの間はずっと気にしています」

佐藤さんが正直に語った生理中の不安【写真:松橋晶子】
佐藤さんが正直に語った生理中の不安【写真:松橋晶子】

――JISSは気軽に婦人科を受診できる環境なのでしょうか?

「メディカルクリニックというセンターに歯科、内科、外科などが入っていて、婦人科もあります。当時、歯科に通っていて『ついでにいけるじゃん』という軽い感じで行ってみると、こんな簡単に相談できるんだと。それがきっかけでピルを服用するようになり、それ以降は近所の婦人科に行きました。スポーツをやっていることを説明して、『飲んでいるピルがなくなりそうなので処方してくれませんか?』と気軽な感じ。スポーツ専門のドクターではないですが、スムーズに対応していただきました」

――イベント中にはスパッツのユニフォームだとナプキンの形が浮き上がってしまう不安を正直に語っていました。思春期の中高生はより切実になる課題です。

「その辺はみんなが試行錯誤しているところじゃないでしょうか。私もいろんな生理用品を試して、初潮が来た中学校3年生から高校生くらいは当時『これだ』と思ったものを周りにシェアした気がします。『このナプキンが薄くて、漏れにくくていいよ』『絶対、羽根つきの方がいいよ』と。ただ、(より露出が多い)ブルマを穿く短距離の選手の方が気になるもの。下着がはみ出てないかみんな気にするし。投てき選手はその辺の心配はなかったけど、スパッツはピタッとしているので、やっぱり下着やナプキンの形が見える。色によっても影響が出るし、本当に気になります。ユニフォームの間はずっと気にしています」

――最近、陸上界は盗撮防止のユニフォームの開発が進んでいます。女性アスリートの競技環境が守られていくのは素晴らしいことですが、月経対策という面でもユニフォームに配慮があるといいですね。

「スパッツにとらわれない風習になっていけばいいなとは思います。ただ、陸上のユニフォームの格好良さはピタッとして体のラインが綺麗に見えるところ。そこはなくさなくていいけど、選手が選べる状況になってくれるとうれしい。例えば、短パンにすると形が見えないから集中しやすい。スパッツはナプキンがズレていると形が分かる気がして、私はすごく気になります。ただ、短距離の選手はゴールする時に(計測器で)より見えるのはピタッとしたブルマやスパッツなので、判断は難しいですね」

――佐藤さんなりに「こんなものがあったらいいな」という要望はありますか?

「例えば、ナプキンが2枚くっついていて1枚を外したら新しいのが出るみたいな形状があったら、めっちゃ楽とは思うけど、分厚くなってモコモコしてしまう。本当に個々の事情に向き合っていくしかない。あとは知識面。私も中高生の時はスマホじゃなく、大学になってスマホで簡単に調べれるようになり、タンポンの使い方とか理解して使えるようになった。でも、知らないことはいっぱいある。センシティブな内容だから簡単に人と喋れる話でもないし。新しく変わっていくと一番いいですね」

(後編に続く)

(W-ANS ACADEMY編集部・神原 英彰/Hideaki Kanbara)

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