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月経前の不調はなぜ起こる? 食欲増加にイライラ…心身の変化への対処法を専門家が解説

「INTERVIEW / COLUMN」記事

  

月経前の不調はなぜ起こる? 食欲増加にイライラ…心身の変化への対処法を専門家が解説

著者:W-ANS ACADEMY編集部

2024.12.12

コンディショニング

月経

【写真:写真AC】
【写真:写真AC】

「女性アスリートと月経」特集・須永美歌子教授が解説するPMSと対処法

 今回の「女性アスリートと月経」特集で、自身の経験を語ってくれた陸上女子やり投げの佐藤友佳選手(ニコニコのり)。彼女が長年、悩んでいたというのが月経前症候群(PMS)です。心と体、両方に不調が現れるPMS。そもそもPMSはどうして起こるのか? そして、苦しい時期をどうやって乗り越えればいいのか? 女性アスリートのコンディショニングを専門とする、日本体育大学の須永美歌子教授に伺いました。

 ◇ ◇ ◇

 月経前に、心や体に現れる様々な不調を月経前症候群(PMS)と言います。症状は、体であれば腰痛や頭痛、胸の張り、むくみ、体重増加など。心であればイライラや不安、落ち込みなど、人によって異なります。

 PMSは月経の3~10日前(排卵日を過ぎてから月経が始まるまでの間)に起こります。原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の変化が大きく影響していると言われます。

 女性ホルモンは、月経周期(月経初日から次の月経の前日まで)の時期によって、分泌量が変化します。そのため、筋肉や神経の機能に影響を与え、心や体のコンディションが変化すると考えられています。

 以前、部活やクラブチームに所属する中学・高校生のアスリートにアンケートを実施したところ、月経前に体に現れる症状で一番多かったのは、症状は「食欲増加」でした(図A参照)。

 また、「体重増加」「むくみ」といった、体重の増減に関連する回答が多いことにも気づきます。これらに共通するのは「体重が増えることへの不安」です。

今回はPMSに見られる食欲や体重に関する変化についてと、その対処法についてお話しします。

月経時のむくみが気になる人は塩分を控えめに

(図A)水泳、陸上競技、ラグビーを専門とし、部活やクラブチームに所属する中学生・高校生114名が回答。【資料提供:須永美歌子日本体育大学教授】
(図A)水泳、陸上競技、ラグビーを専門とし、部活やクラブチームに所属する中学生・高校生114名が回答。【資料提供:須永美歌子日本体育大学教授】

 まず、月経時に体重増加やむくみが起こる原因は、女性ホルモンの作用により体内に水分をため込みやすくなっていると考えます。やはり回答数の上位にきている「胸が張る」というのも同じ原因です。

 これらの症状が気になる、困っている場合、塩分(ナトリウム)を控えると少しすっきりします。例えばピザやインスタントラーメンといった、インスタント食品や加工食品、ポテトチップスのようなスナック菓子を控える。しょうゆやソースはかけないでつけて食べるのも、意外と量を減らせます。

 また、カリウムの豊富な食品は、体内からナトリウムの排出を助けるので◎。例えば、バナナ、ほうれん草などがよいですよ。

 また、月経前に食欲が増加するのも、女性ホルモンの変化による影響と考えられています。実際、食べる量が増加するという調査報告もあります。

食欲増加に悩む人へ推奨する3つの対策法

(図B)月経前になると体重が増加する裏には、女性ホルモンの変化による影響が。【資料提供:須永美歌子日本体育大学教授】
(図B)月経前になると体重が増加する裏には、女性ホルモンの変化による影響が。【資料提供:須永美歌子日本体育大学教授】

 とはいえ、「ガマン」ばかりでは、逆に強いストレスを感じてしまい、症状が重くなる恐れもあります。食欲は「抑え込む」ではなく「コントロール」するのが正解。甘いものやスナック菓子のドカ食いに悩んでいる人は、以下の3つの方法を試してみてください。

[1]甘いものやスナック菓子は、食べるタイミングと量を決めておく(1回の食べすぎを防ぐには少量を個装した食べきりサイズがおすすめ)。
[2]量を決めてもつい、たくさん食べてしまう人は、月経前はお菓子ではなく、果物やゼリーに切り替える。
[3]食欲が止まらない時は、一口ごとの噛む回数を増やして食べる。

 3の「噛む回数を増やす」ですが、たくさん噛むと脳にある『満腹中枢』を刺激。「もう十分食べたよ!」という、脳の反応を促してくれます。また、一口一口に集中し、ゆっくり味わって食べるだけでも、意外と食欲の暴走をストップする助けになります。「ポテトチップスを開けたら、止まらなくなって1袋食べちゃった!」ということを防いでくれますよ。

 PMSによる体の不調の治療には、低用量ピルも有効とされています。日常生活に支障をきたすほどツラい、あるいは大事な試合に影響することを避けたい場合は、婦人科の医師に相談するのも1つの方法です。

 最後に、チェックシートを用意しました。これらの症状が生理の3~10日前から現れ、生理が始まるとともに消える場合、PMSの可能性があります。心当たりのある人は、これから3か月程度、毎月チェックしてみてください。

 次回は心の不調についてお話ししましょう。

【月経前に現れる代表的なPMSの症状】
<カラダの症状>
□おなかや下腹部に膨満感がある
□顔や手、足にむくみがある
□頭痛や頭が重い感じがある
□胸が張って痛い
□腰や腹部に痛みや重みを感じる
□ひどく眠くなる
□体重が増える
□便秘になる

<ココロの症状>
□イライラしやすく怒りっぽくなる
□ひどく落ち込む、うつうつ気分になる
□不安、緊張感、どうにもならないなどの感情がある
□感情をコントロールできず不安定に
□批判や拒絶に対して敏感になる
□いつもより疲労感がある
□集中力が低下する

(W-ANS ACADEMY編集部)

Sunaga Mikako

須永 美歌子

日本体育大学教授

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事、日本トレーニング科学会会長。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)。

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