「INTERVIEW / COLUMN」記事
この時期、悩まされる「冷え」の正体とは 病気?放置するとどうなる? 今日からできる対処法いろいろも紹介
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2023.12.27
コンディショニング

冬のお悩み「冷え」を大特集! 婦人科の専門医・西ケ谷順子先生に聞く
年末になり、いよいよ寒さが身に染みる時期に突入。「手足がかじかむ」「体が冷えすぎて肩がこる」など、スポーツをしている・していないにかかわらず、多くの女性が「冷え」に悩まされる時期がやってきました。そこで今回は「冷え」を大特集!
まずは「冷え」の正体からふだんの生活で出来る予防法、対処法を婦人科の先生に伺いました。「冬だから仕方ない」と諦めず、出来ることを取り入れて快適に過ごしましょう。
◇ ◇ ◇
Q.「冷え」って何ですか? 病気でしょうか?
「冷え」とは血流が悪くなることで起きる症状のこと。病気ではありません。
私たちの体は血液が体の隅々までいきわたることで「熱」を運び、体温を調節しています。ところが、気温が下がると熱を逃さないよう血管が収縮。「生命を維持するために大事な臓器を守ろう!」と、体の中心に血液を集中させます。すると、一時的に体の末端にあたる手足の血流が悪くなり、冷えを感じやすくなります。
このように冷えは外気温の寒暖差が激しいと起こします。例えば真夏に冷房の効いた場所に入るとゾクッとしますよね。他、汗で冷えたり、冷たいものを飲んだりすると血流が悪くなり、手足が「キュッ」として冷えが起こります。
Q.どうして血流が悪くなるの?
血流をコントロールしているのは自律神経です。自律神経には「興奮の神経」とよばれる「交感神経」と、リラックスの神経といわれる「副交感神経」があり、二つがバランスよく働くことで体温調節を行います。
暑さで体温が上がりそうなときは、血管を広げてたくさんの血液を流して皮ふの表面の温度をアップ。そして体内にこもった熱を「発汗」という形で体外に逃がします。逆に寒さで体温が下がりそうなときは、血管を収縮。血液の流れを少なくして、体内の熱を逃がしにくくする、という具合です。
ところが何らかの原因で自律神経のバランスが崩れると、体温コントロールがうまく出来なくなり、その結果、冷えにつながります。
自律神経のバランスは、心身に強いストレスがかかったり、ホルモンバランスが乱れたりしても崩れます。例えば緊張すると手がひんやりと冷たくなりますよね。それは「緊張」という強いストレスによって交感神経が優位に働き、血流を妨げるためです。
ほか、体の熱を作る筋肉の量が少なかったり、運動量が少なく、あまり筋肉を使わない生活を送ったりしていると、体内の熱生産が少なくなり、慢性的な冷えにつながります。
Q.冷えを放置すると体に悪いの?
寒い場所に出たときに、体がキュッとなり、一時的に手足が冷たくなるのは正常な反応です。体の中心部が温まったことを脳が察知すれば、手先・足先の血流も元通りになり、全身が温まります。
ところが様々な要因から慢性的に血流が滞ると、例えば急に生理痛が重くなる、頭痛、肩こりがひどい…といった色々な不調を引き起こすので、要注意です。
体の中心部には子宮や卵巣といった婦人科系の内臓も集まります。昔の人はよく「体が冷やすと子どもを産めなくなるよ」と言いましたが、体の深部が冷えないよう、血の巡りをよくしておくことは健康を維持するためにとても大切です。
また、オトナの冷えは注意が必要です。30代以降になると、冷えの裏に重大な病気が隠れている場合もあります。例えば膠原病、甲状腺機能低下症、血行障害を起こす病気など。もしも冷えがとても重いと感じる方は、一度、病院で診察を受けてください。
Q.日常生活で出来る効果的な「冷え対策」を教えて!
とにかく「ゾクッ」としたら、ガマンをせずに温めること。そして冷えないための体作りを意識しましょう。一つひとつは小さな対策でも、「温めること」「冷やさないこと」をこまめに続けることが大事ですよ。
電子レンジも使う? 今日からできる冷え対策を紹介
<今日から出来る! 冷え対策いろいろ>
○手先、足先には寒さを敏感に感じるセンサーがあります。ゾクッとしたら、携帯用カイロを手に握る、靴用のカイロを使って。温かいペットボトルを手に握るだけでも効果的。
○体を深部から温めることも大切。冷たい飲み物を控え、温かい飲み物をとる習慣をつけましょう。食事のときは必ず、温かいスープや味噌汁をとるとしっかり温まります。
○服装は「首」「手首」「足首」の「3つの首」を冷やさないことがポイント。逆に汗をかくほど暖房を強くしたり重ね着をしたりするのは逆効果! 肌の表面の汗が体を冷やし、血流が悪くなります。吸汗速乾素材の肌着をつけるのもおすすめ。
○運動習慣のない人はちょっとした筋トレを習慣に。スクワットやランジなど、下半身の筋肉を鍛えると効率的です。可能であればジョギングも◎。
○卵や鶏肉、魚介類など良質のたんぱく質などを積極的にとりましょう。また、ビタミンE、C、B1、パントテン酸を含む食品もおすすめです。逆に南国のフルーツは体を冷やすので冬場は控えると◎。


手作りできる『ぬか袋カイロ』は電子レンジで2、3分チン! 首の後ろや太ももの上、お腹に乗せると、じんわりと体が温まります。

教えてくれたのは……
■西ケ谷順子先生 / Yoshiko Nishigaya
医学博士。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、婦人科腫瘍専門医。聖マリアンナ医科大学卒業後、聖路加国際病院にて研修。その後聖マリアンナ医科大学病院、杏林大学病院を経て2022年から東京共済病院婦人科に勤務。現在、婦人科部長を務める。疾患や治療について、わかりやすい説明を心がけている。
(W-ANS ACADEMY編集部)
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