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キーワードは「高炭水化物」&「水分補給」 勝負の試合期に積極的に摂りたい食材とは

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キーワードは「高炭水化物」&「水分補給」 勝負の試合期に積極的に摂りたい食材とは

著者:W-ANS ACADEMY編集部

2025.07.24

コンディショニング

食事

【写真:写真AC】
【写真:写真AC】

特集「ピリオダイゼーションに合わせた試合期の食事」第1回、理論編

 今、世界のスポーツ界では「ピリオダイゼーション」(期分け)に則った食事が提唱されています。前回の準備期に続き、今回はいよいよ試合期の食事についてです。学生アスリートから日本代表選手までの栄養サポートを行う日本大学の松本恵教授に、試合期の食事のポイントについて聞きました!

 ◇ ◇ ◇

 大会が続いたり、リーグ戦が始まったりで疲労が溜まりやすい試合期。準備期から引き続き「主食・主菜・副菜・汁物」が揃ったバランスの良い食事を食べることは基本ですが、パワー系・持久系競技ともに、「高炭水化物」の食事を心がけます。

 人間の体を車に例えると、炭水化物は「ガソリン」です。枯渇すれば体が動かなくなり、大事な試合で力を発揮できなくなります。また炭水化物の一つである米は脳を働かせる主な栄養素。しっかり食べないと集中力や判断力の低下を引き起こします。

 試合期に摂りたい炭水化物量は食事の6~7割が基本です。ただし、厳密にではなくても大丈夫。まずは、主食を抜かないこと。そして炭水化物は米や麺類のほか、根菜や果物にも豊富に含まれているので、「炭水化物ってどんな食品から摂れるのかな?」と考えながら、いろんな食材から積極的に摂りましょう。

 そして、試合期にもう一つ大切なのは水分補給です。スポーツをやっている皆さんは、水分補給の大切さはよく知っているとは思いますが、それでも暑い季節以外はつい油断しがちです。試合中は例え冬であっても激しく発汗しています。気候に関わらず、十分な水分を摂ってください。

 水分補給のポイントは以下の2つです。

①水分は1日2リットル以上摂る

②飲み物だけでなく食べ物からも水分を補給する

「え、飲み物だけで十分じゃない?」と思われたかもしれませんが、練習や試合中、その前後に水やスポーツドリンクを飲むだけでは、意外と必要な水分量を摂りきれません。そこで、最低限の2リットルの水分を1日の間にどのように摂れば良いのかの一例を見てみましょう。

飲み物以外からの水分の摂り方

【写真:写真AC】
【写真:写真AC】

【試合期の水分の摂り方(一例)】
朝食:みそ汁・スープ・乳製品などで(250ml)
午前・午後の休憩・昼食:水やお茶、嗜好飲料(500ml)
トレーニング・試合中:スポーツドリンク(1ℓ)
夕食:みそ汁・スープ・乳製品などで(250ml)

 このように運動時以外の時間もこまめに飲み物を摂ったり、食事の際は温かい汁物や乳製品を摂ったりします。

 また、野菜や果物のほとんどは水分ですし、お米にも水分が含まれています。夕飯で摂った水分は就寝中の、朝食で摂った水分は午前中の脱水を予防してくれます。ですから3度の食事を抜いたりせず、しっかり食べてくださいね。

 そのほかには、温かい飲み物や汁物は特に試合前にも摂ることをおすすめします。なぜなら、体を内側から温めると、緊張で働きが悪くなった胃腸が元気になり、消化・吸収を促してくれます。試合前日の就寝前や当日の朝の起きがけに白湯を飲む、試合前の最後の食事やアップ前にスープやお吸い物を摂ると、緊張も和らぎますよ。

 さて、緊張感が高まる試合前日や当日ですが、ストレスからお腹を壊すなどコンディションを崩しやすくなります。そのため、消化に悪い脂っぽいもの、刺激の強い辛いもの、冷たいものは胃腸に負担がかかるので、できるだけ避けましょう。また、生ものは食べない、食事の支度や食べる前はよく手を洗うなど、衛生管理もきちんと行い、食中毒の予防に努めることも大切ですよ。

 最後に、試合期に積極的に摂りたい野菜と果物の一覧を挙げました。きゅうりやもやしは水分含有量が90%以上の野菜ですし、調理の手間もかからず安価なので、常に用意しておくと安心。マンダリンはオレンジとみかんの中間のような甘さで、皮も手でむけるのでいつでも簡単に食べられます。海外のスーパーでも手に入りやすいので、私自身、海外遠征に帯同した際、よく利用する果物の一つです。

 次回は試合前におすすめのレシピを紹介します。

【試合期に積極的に摂りたい野菜&果物はコレ!】
きゅうり、トマト、もやし、レタス、大根、スイカ、桃、パイナップル、柑橘類(マンダリン、みかんなど)、いちご

教えてくれたのは…

■松本 恵 / Megumi Matsumoto

管理栄養士/公認スポーツ栄養士。日本大学文理学部体育学科教授、博士(農学)。北海道大学大学院農学研究科を修了後、スポーツ栄養の現場サポートに携わるようになる。サウスオーストラリア大学招待研究員を経て2011年より現職。同大学の柔道部、陸上競技部、トライアスロン部、体操部などの選手の栄養サポートを行うほか、オリンピックでは2021年東京大会、2024年パリ大会でサーフィン日本代表をサポート。また、日本ライフセービング協会ハイパフォーマンスチーム専門スタッフ(栄養士)として活動中。

(W-ANS ACADEMY編集部)

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