「INTERVIEW / COLUMN」記事
栄養士がおすすめする「準備期」の食事 貧血予防、体重管理、腸活…3つの“目的別”献立例を紹介
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2025.03.19
コンディショニング
体重管理
貧血
食事
特集「ピリオダイゼーションで考える食事」第3回、準備期におすすめの献立例
近年、スポーツ界で提唱されているのが、ピリオダイゼーション(期分け)にのっとった食事。1年を「準備期(プレシーズン)」「試合期(インシーズン)」「移行期(トランスファーシーズン)」と3つに期分けし、それぞれの期間に合った食事を摂る方法です。今回は準備期に摂りたい目的別の食事を、日大の公認スポーツ栄養士、松本恵教授に教えてもらいました!
◇ ◇ ◇
試合期に向けて体を仕上げていく準備期。前回、準備期はまずは今の自分の体の状態を知り、「何を食べればよいのか」を知ることが大事、というお話をしました。
準備期では、試合や競技会の多い時期に備えて、ハードな練習・トレーニングをこなしながらも、体調や体重を整えていくことが大切です。そこで今回は準備期の体作りを進めるうえで、多くの選手にとって必要な「疲労骨折・貧血予防」「体重のコントロール」「腸内環境の改善」という、目的別の献立のポイントと献立例を紹介します。
それぞれの目的別のポイントや献立を参考にしながら、別の素材に置き換えたり、料理の方法を変えたりして、続けてみてください。「どんな食品を摂ればいいのかな?」と考える習慣もついてきますよ。
気をつけてほしいのは、どんな目的の食事であっても「バランス良く食べる」ことが大前提である、ということです。「バランスってどうやってとればいいの?」と悩んでしまう選手も多いかと思いますが、基本的な食事の形である「主食」「主菜」「副菜」「汁物」「牛乳・乳製品」「果物」を揃えると、自然と整います。あまり神経質にならなくても、大丈夫ですよ。
また、牛乳・乳製品は食事と一緒ではなく、補食や間食としてトレーニングや前後に取り入れてもOK。果物は100%果汁ジュースで代用することもできます。
疲労骨折・貧血予防のための献立例
持久力アップや筋肉をしっかり動かすためには、血液を作り、体内で酸素を運ぶ力を高めることが必要です。特に女性は貧血を起こしやすいため、準備期からしっかり予防に努めましょう。また、長いシーズンを怪我なく乗り越えるために、骨の代謝を良くすることも大切です。血液を作り、骨の代謝を良くするためには、ビタミンD、カルシウムや鉄、葉酸といった微量栄養素が活躍。葉物野菜や魚介類、牛乳・乳製品をバランス良く利用することによって、十分に補給できます。
今回、具体的な献立の一例を紹介しますが、主菜が2品ありますが、体格が大きい選手や筋量増量中の選手はエネルギーやたんぱく質を十分に確保するために、主菜を2品用意するとよいでしょう。

〇マイタケご飯……体内でカルシウムの吸収をサポートするビタミンD。マイタケはビタミンDの含有量がキノコ類でもトップクラス。また貧血予防に欠かせない亜鉛も含みます。
〇イワシのパン粉焼き……イワシはカルシウム・鉄分などのミネラルが豊富な食品。また、ビタミンDも補給できます。
〇キャベツとピクルス……食物繊維と酢酸の摂取は、腸内環境を整える効果を期待!
〇鶏むね肉のネギソースかけ……鶏むね肉は高たんぱく・低脂質の食品。体重コントロールが必要な準備期は上手に活用。
〇小松菜とマッシュルーム……小松菜はカルシウム・鉄分が、マッシュルームはビタミンDが豊富な食品。
〇玉ねぎの味噌汁………たっぷり野菜の味噌汁で食物繊維を補給。
〇ヨーグルト……とても優秀なカルシウムの補給源。乳酸菌の摂取は腸内細菌叢を改善します。
〇いちごとグレープフルーツ……骨や靭帯を構成するビタミンCを果物で摂りましょう。ビタミンCは鉄の吸収にも働きます。
体重コントロールのための献立例
体重の増減が激しいと、コンディションも安定しません。体重や体組成は、「エネルギーの消費量と摂取量」のバランスが取れていると安定します。日頃から体重の増減に合わせて、食事量を調整する習慣をつけましょう。
まず、取り組みやすいのは脂質の多い食材や料理を低脂肪に代えること。ベーコンはロースハムに、カルボナーラから和風のきのこパスタに。唐揚げを焼き鳥にするなど、素材や調理方法を変えるだけでグッと低脂肪になります。
あとは、便通や脂質代謝の改善などをサポートする食物繊維の多い食材を選ぶ、お菓子やファストフードの摂りすぎに気を付けてバランス良く食べられるよう工夫しましょう。
そして、スポーツをする女性にも意外と多いのは「朝食抜き」です。朝食を抜くとお昼や夕食でドカ食いをしてしまい、急激な血糖値上昇から体脂肪が増えやすくなってしまいます。
また、試合前に調整が必要な階級別競技の場合、試合期になって急に慣れない体重調整を行うと体調を崩す恐れがあります。準備期から起床時、排便・排尿後の朝食前などに、いつも同じ体重計を使って測定する習慣をつけると、自分の体重の変動の傾向がわかるようになるので、調整期にも役立ちますよ。
腸内環境を整えるための献立例

日本代表など、国内のトップアスリートの強化や育成を行う上で指針となる、HPSC(ハイパフォーマンススポーツセンター)のトータルコンディショニングのガイドラインでは、準備期にやるべきことの一つに「腸内環境を整えること」を挙げています。
腸内環境を整えると、栄養を吸収する力がアップし、免疫の働きも高まります。つまり、食事とトレーニングによる体作りがよりうまくいき、かつ、大事な時に風邪を引くといった不調の予防にもつながるのです。意識して摂りたい栄養素は食物繊維や乳酸菌食品。ただし、食事を変えても腸内環境が整うまでには、1か月はかかると言われています。試合や競技会が集中するシーズンを前に計画的に腸内環境を整え、シーズン中も良い腸内環境が継続できるよう食べ方を身につけましょう。

教えてくれたのは…
■松本 恵 / Megumi Matsumoto
管理栄養士/公認スポーツ栄養士。日本大学文理学部体育学科教授、博士(農学)。北海道大学大学院農学研究科を修了後、スポーツ栄養の現場サポートに携わるようになる。サウスオーストラリア大学招待研究員を経て2011年より現職。同大学の柔道部、陸上競技部、トライアスロン部、体操部などの選手の栄養サポートを行うほか、オリンピックでは2021年東京大会、2024年パリ大会でサーフィン日本代表をサポート。また、日本ライフセービング協会ハイパフォーマンスチーム専門スタッフ(栄養士)として活動中。
(W-ANS ACADEMY編集部)
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