「INTERVIEW / COLUMN」記事
女子大学生アスリート100人に聞きました! 体重コントロールやダイエット、みんなどうしてる?
著者:W-ANS ACADEMY編集部
2023.07.14
体重管理
日本体育大学などの運動部のみなさんのリアルな声をお届け
W-ANS ACADEMYでは今回、体重管理に関するアンケートを女子大学生アスリートに実施。計100人の学生さんに答えていただきました! 協力してくれたのは、日本体育大学をはじめ大学の運動部に所属するみなさん。早速、体重管理や減量・増量の方法などなど、100人のリアルな声をお届けします!
◇ ◇ ◇
コンディショニングに役立つ体重計測。でも、日々の数値の変動には縛られないで!
まずは、コンディションの指標について。「体重」を挙げた人がダントツに多く、なんと全体の約76%。そのうち「体重は毎日計測している」という人は約43%いる、という結果に。
「どんな練習をして、どんなものを食べたときに、体重がどれぐらい変化するのか知ることは、コンディショニングに役立ちます」とは、運動生理学や女性のためのコンディショニング法を専門とする日本体育大学の須永美歌子教授。
ただし、「毎日の数字の変化に一喜一憂しないことが大事」とも。その理由は、短期間で体重が上下する理由は、気になる「体脂肪」ではなく「水分」が変動するため。
「筋肉や体脂肪は短期間で増減しませんが、水分は短期間で変動します。また、家庭用の体組成計の数値も水分量の影響を受けるので、体重だけでなく体組成の数値にも影響。毎日数回、体重を測る人もいますが、『太った』『痩せた』と振り回されないようにしましょう」(須永教授)
回答を細かくみていくと、実は約40%の人が「体重」「BMI」「体組成」「見た目」、そして自分の感覚など、2~4つの指標を総合的にみている、という結果に。このように、体重だけでなく、様々な指標から体の状態をみる、という考え方はとてもいい、と須永教授。
「それから、生理周期によって体重が大幅に変化する人も多いので、できれば1か月単位で数値を観察しながら、コンディショニングに役立てましょう」
減量方法は短期か長期かで明らかな違いアリ
続いて、「減量・増量」の経験を質問すると、約4割の人が「経験アリ」と回答。その目的は減量・増量ともに「競技パフォーマンス向上のため」がトップ。また、減量については「美容・健康が目的」がわずかな差で2位につけました。
具体的な経験談をみると、減量は短期と中・長期では、明らかな違いアリ。
2週間~3か月の短期間集中の場合、ダントツに多かったのは食事制限。「夕飯は白いご飯を抜く」(大学1年時に3か月で-5kg)、「食べる回数を減らした」(高1年時に1か月で-3kg)、「糖質制限」(大3年時に2週間で-3㎏)と、特に主食――炭水化物を抜く人が目立ちました。
ただし、計測日までに食事制限を行った体重別階級制の競技の学生の回答も、一部、含まれていることも考えられます。
半年~1年の中・長期の減量になると「食事の時間と量を考えた」(大学2年時に1年間で-5kg)、「野菜を多めに食べた」(高2年時に半年間で-3kg)と、食事を「制限」するのではなく、内容や食べ方を変えたという回答が主流に。
また、「ランニングの量を増やした」(高校2年時に半年で-5~6kg)、「毎日5kmのランニングと筋トレで減量」(大学1年時に1年間で-10㎏)と、中にはトレーニング内容を変えるだけで成功した、という声もありました。
一方、増量は時間をかけてじっくり取り組むのが基本。「1日に間食としておにぎり3個、プロテインを摂った」(高校3年間で+12kg)、「練習後すぐにプロテインや捕食を摂った」(高校1年から2年間で+5kg)と「タンパク質や炭水化物を多く摂る」「補食をしっかり摂る」に集中。ほか、「お菓子を食べるなら和菓子にした」(大学2年時に実施)など、脂質の多い洋菓子を避けながら体重を増やす努力が伺える回答もありました。
無理な食事制限の経験者からはリバウンドや体調不良の訴えも…
次に減量・増量の結果ですが、失敗経験のある人は25%。これはかなり優秀な数値では!?
「ただし、成功したか否かはあくまでも本人の感想。データを見るうえで、その点を心に留めておく必要があります」とは、ジュニア世代からトップアスリートまで栄養サポートを行う、公認スポーツ栄養士の橋本玲子さん。
「体重管理の目的は、健康的に、そしてベストパフォーマンスを発揮できる体作り。目標体重を達成することではないことは忘れないで」
まず、失敗の原因に目を向けると、「食事制限をしたが食べないことを我慢できなかった」「反動で過食した」というものがほとんど。さらに「減量のしすぎで摂食障害になってしまった」という深刻な声も上がりました。
「焦る気持ちもわかりますが、体脂肪を減少させる減量をする人は1週間に0.5~1%のゆるやかなペースで計画を立てるのが理想的。例えば、体重55kgの選手であれば1か月1.1~2.2kgの減量が目安です」(橋本さん)
特に、高校までの成長期は、エネルギー摂取量を安易に制限するのはNG、とキッパリ。
「例えばスポーツ大国であり、スポーツ栄養の先進国であるアメリカも成長期の減量を推奨していません。成長期にエネルギーや各種栄養素が不足すると、身長が伸びないなど成長を阻害する、怪我のリスクの増加、将来、骨粗しょう症などの病気になるリスクが高まります。どうしても必要な場合は、関係するスタッフや公認スポーツ栄養士に相談のうえ行って」(橋本さん)
最後に増量・減量を行う際に参考にしたものは質問6の表の通り。身近な人の情報や手軽に情報を入手できるWEBやSNSに頼る傾向が強いことがわかりました。その一方で、「正しい食事の知識を得たい」という声が86%の人から集まる、という結果も。
「食事はトップアスリートでないと、直接、専門家に相談できる機会が少ないのが現状です。10代の選手、学生選手が確かな情報を選択し、自分ですべてを調整するのは難しい。食生活を支えるご家族やサポートする指導者と一緒にも、信頼できるソースを探し、無理のない方法を見つけることも大切ですよ」(橋本さん)
(W-ANS ACADEMY編集部)
Hashimoto Reiko
橋本 玲子
管理栄養士/公認スポーツ栄養士
株式会社 Food Connection 代表取締役。サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。姉妹サイトであるスポーツ文化・育成&総合ニュースサイト『THE ANSWER』では、食のスペシャリストとしてアスリートをはじめスポーツをする方々に向けた、食と栄養に関する情報発信にも力を入れている。アメリカ栄養士会スポーツ・ヒューマンパフォーマンス栄養(SHPN)並びに、スポーツ栄養を専門とする国際的なプロ集団(PINES)のメンバーとして海外の栄養士との交流も多い。
Sunaga Mikako
須永 美歌子
日本体育大学教授
日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事、日本トレーニング科学会会長。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)。
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